
“従業員を大切にしたい”企業の取り組みが“働きやすさ”につながり、その両想いの関係がミライ人材につながっていると編集部は考えています。そこで今回は「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」で「ホワイト500」に認定された帝国ホテルに注目。創業135年の伝統と格式におもてなしの精神が共存する帝国ホテルは、従業員の働きやすさを追求し、福利厚生の充実した企業でもあります。独自の制度やその背景をうかがいました。
迎賓館としての使命と従業員への想い

編集部| 帝国ホテルの歴史と、社員への想いについて教えてください。
徳丸さん| 帝国ホテルは1890年に渋沢栄一をはじめとする財界人たちが発起人となり、官民一体となって誕生しました。当時の日本にはまだ国際的な要人を迎えるための本格的な宿泊施設がなく、国の発展とともにその必要性が高まっていました。その社会的要請に応える形で生まれたのです。
以来、「公の器(こうき)」としての使命を持ち続け、日本の迎賓館としての役割を担ってまいりました。その成り立ちが従業員の精神的な支えにもなっており「人の、社会の、お客様の、そして従業員の役に立ちたい」という意識が、長年にわたり受け継がれ浸透しています。
帝国ホテルの価値を支えるのは、従業員一人ひとりの誠実なおもてなしの心です。期待値の高いお客様の特別な時間を提供する我々がハッピーでなければモチベーションにもつながりません。ホテル業界のトップでありたいと心掛けているなかで、当社では従業員の満足度を高めながらサービスレベルを向上させれば、お客様の満足度が上がり、その結果として収益が向上し、その収益をハードウェアの改善や人材投資につなげることで従業員満足度とサービスレベルが更に高まるという理想的なサイクルをめざしています。制度もトップレベルにすることで従業員が安心して長く働ける環境を整えることに力を入れています。
編集部| 2025年3月には、健康経営優良法人として経済産業省の認定する「ホワイト500」の称号を取得されました。
徳丸さん| 私は入社以来、情報システム、営業、総務など多岐にわたる部門を経験してきました。時代が移り変わっても変わらない従業員の想いを受け継いでいくなかで、制度に関しては常にアップデートするように努力しています。特に近年、若い世代の働き方や価値観は確実に変化しているので、それに応じた制度の整備がますます重要になっています。
これまでの取組みが実を結び、「ホワイト500」に認定されたことを、大変嬉しく思います。
女性活躍推進に必要なのは男性もしっかり向き合う風土

宿泊部客室課や上高地帝国ホテル勤務を経て、産休・育休を経験した後に人事部に異動。労務課でキャリアを積んだ後、ダイバーシティ推進室を立ち上げ、現在は労務支配人の立場で福利厚生の充実や健康経営に従事している。プライベートでは家族との時間を大切にしており、生後9カ月になる孫の笑顔を引き出すのがマイブーム
編集部がキラリを感じた「法律を上回る」制度へのアップデート
編集部| 玉置さんのこれまでのご経験や、現在の取り組みについて教えてください。
玉置さん| 私は入社以来、長年人事部で勤務し、現場の声を間近で聞いてきました。従業員の声を大切にすることで、より良い制度が生まれるというのが私の考えです。実際に「3歳年度末まで取得可能な育児休業制度」や「子が中学校の始期に達するまで取得可能な育児短時間勤務制度」など法律を上回る制度の多くは従業員の声を反映したものです。
編集部| 男性の育児休業取得も推進されているそうですね。
玉置さん| はい。男性従業員は休業取得をためらう傾向にあるため、会社へ出生届を出す際、育休取得の意向確認を行い、取得できない場合はその理由を明記してもらうようにしました。
また、育休に入る前に行う面談には、上司や職場の理解が必要であることから、上司にも同席してもらっています。
その他、2024年9月に「育児休業取得応援金制度」を新設し、収入面でも手厚いサポートをしています。※応援金は男女ともに支給
「食」も「職」も充実する、こだわりの従業員食堂とは?

自営化により実現したホテル全体のクオリティ向上
編集部| 帝国ホテルの福利厚生制度は、どのような考えのもとに作られているのでしょうか?
徳丸さん| ホテルはお客様に最高のサービスを提供する場所です。そのためには、働く従業員自身が健康で、安心して働ける環境でなければなりません。従業員が心身ともに満たされていなければ、本当の意味での「おもてなし」は実現できないのです。こうした考えをもとに、福利厚生制度を整え、子育てのサポートに限らず、日頃から働きやすい職場環境づくりを進めています。
編集部| 職場環境を整えるうえで、特に力を入れて取り組んでいることはありますか?
玉置さん| 従業員の健康を支えるための従業員食堂です。食堂は2021年8月、コロナ禍での雇用確保、若手育成、食品ロス削減、従業員の健康管理等を目的として自営化しました。食事は日々のパフォーマンスや健康に直結するため、栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員満足度、ひいてはロイヤリティ向上につながると考えています。
編集部| 従業員食堂の運営を自社で行うメリットは、どんな点にあるのでしょうか。
徳丸さん| なにより「おいしい!」ことですね(笑)。帝国ホテルの料理人が手掛けるメニューなので、クオリティには自信があります。スマートミール定食も導入しています。
玉置さん| そうなんです。帝国ホテルの料理人と管理栄養士が考案したメニューで、栄養バランスが考えられているだけでなく、毎日変わるメニューは日々の楽しみにもなっています。フレンチの技法を取り入れたスープや、ホテルのデザートの端材をアレンジしたスイーツも人気で、フードロス削減にもつながっています。また、
メニューを発案・開発する機会が増えたことなどから若手料理人の育成にもつながっています。
満足度アップ! 福利厚生の充実が生み出す活気

働きやすさにつながる制度は毎年拡充を検討
編集部| これまでの施策に対する従業員の反応や成果について教えてください。
玉置さん| 福利厚生の充実は、確実に満足度向上につながっています。例えば従業員食堂の自営化では、導入後の満足度調査で90%以上が「満足」と回答しました。おいしい食事が楽しみになり、健康面でも良い影響が出ているとの声が多いです。
また、食堂は単なる食事の場ではなく、部署を超えた交流の場にもなっています。「食事の時間が同僚との会話のきっかけになった」「異なる部門の従業員と話す機会が増えた」といった意見が寄せられ、職場のコミュニケーションが活性化していると感じています。
編集部| 育児支援制度についての反応はいかがでしょうか?
玉置さん| 男性の育休取得率は年々向上し、女性の離職率も低下しています。育休を取得した従業員からは、「会社のサポートが手厚く、安心して家庭に向き合えた」「復帰時に上司との面談があったことで、スムーズに仕事に戻れた」との声が届いています。
編集部| 制度の充実が、従業員の働きやすさと意欲向上につながっているのですね。
玉置さん| そうですね。今後も従業員の意見を取り入れながら、より良い職場環境をつくっていきたいと考えています。
変わる時代に合わせ、より豊かな職場環境へ

幸せで健やかに働き続けられることが、質の高いサービス提供に
編集部| これまで多くの先進的な取り組みを進められてきましたが、今後の福利厚生についてはどのようにお考えでしょうか。
徳丸さん| 帝国ホテルは、日本の迎賓館の役割を大切にしながらも、よりよい職場環境を常に模索しています。長く働く従業員が多く、家族のように支え合う文化が根付いていることは、当社の大きな強みです。その環境をさらに充実させることで、「安心して働き続けられるホテル」をめざしていきます。
編集部| それがホテルの価値を高めることにもつながるのですね。
徳丸さん| ええ。従業員が幸せで健やかに働き続けられることが、帝国ホテルらしい質の高いサービスの提供につながります。お客様が再訪された際に、顔なじみのスタッフが温かく迎える——その安心感こそが、帝国ホテルらしさでもあります。
今後は、東京事業所の再開発や帝国ホテル 京都の開業を見据え、新たな顧客層への対応も進めます。伝統を守りながらも、現代のニーズに合ったサービスを展開し、多様なゲストを迎えられる体制を整えていきます。その一環として、富裕層向けのホスピタリティを強化し、国際的な視点を持った人材の育成にも力を入れる方針です。
これからも「人と人とのつながり」というホテルの本質を大切にし、帝国ホテルならではの福利厚生を進化させていきます。

編集部コラム
ホテル業界のトップとして高い期待値に応えるには「従業員がハッピーであること」とまず冒頭で語ってくださった代表取締役常務の徳丸さん。自らが産休・育休を取得した経験から、かつてかなわなかったことを基に柔軟に制度を拡充していきたいと思いを語る労務支配人の玉置さん。“役に立ちたい”という精神が強く浸透しているのはもちろん、モチベーションやその精神のアップデートは、制度や風土を常に改善し続ける企業努力の積み重ねに基づくものであるということを強く感じました。
インタビューの後、従業員食堂で一緒に昼食をとらせていただいたのですが、バックヤードでお会いするみなさんの顔を拝見して、インタビュー内容に説得力が加わりました。日々の風土づくりが実を結ばれた「ホワイト500」の認定、おめでとうございます。(OZmall/NAOKO ARAKAWA)
企業DATA
株式会社帝国ホテル
- ホームページ
- 公式HP
サステナビリティ/人的資本と多様性
インタビュー連載企画
~キラリ企業・ミライ人材~
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福利厚生や社内コミュニケーションの課題解決に!
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PHOTO/KAZUHITO MIURA WRITING/TOMOKO HACHIYA