ローリングストックを始めよう!初めてでも失敗しないコツやおすすめ備蓄アイテム、収納の実例まで、防災備蓄のプロが丁寧に解説
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地球温暖化が進み、地震や台風などの自然災害が増加。もう災害は他人ごと、遠い未来のことでは済まされないから、自分にできる「防災」を一歩ずつ始めてみませんか? 今回は、いつも利用している食品・日用品を少し多めにストックすることで、非常時に役立てる備蓄方法「ローリングストック」についてご紹介。初めてでも失敗しないコツやおすすめの備蓄アイテム、収納方法の実例まで。楽しくサステナブルな備え方を徹底ガイド。
更新日:2022/03/08
ローリングストックとは?一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会 代表理事の長柴美恵さんが解説
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ローリングストックとは?
ローリングストックとは、いつも利用している食品や日用品で、非常時にも利用できるものを少し多めに備蓄(ストック)する方法のことです。
ポイントは、非常時を意識した上で、自宅で安全に待機できる状況下で、一緒に生活している人すべてをまかなえる最低1週間分の必要なものがきちんとストックしてある状態ということ。
調味料やトイレットペーパーを予備として多めに買っておくこととは別ものです。また、非常用の乾パンや賞味期限が年単位の缶詰といった、“非常食”を備蓄しておくこととも違います。
あくまで、“日常的”に利用している食品や日用品を、非常時にも乗り切れる分だけ常にストックしておき、それを生活の中で消費し、消費した分だけ買い足していくこと。なので、より手軽で無駄がないんです。
今、ローリングストックが注目されている理由とは?
ローリングストックという言葉は数年前からあったのですが、災害用の非常食を備蓄するというイメージが強かったんです。
そうではなくて、スーパーで売っているような身近ものでも災害用の備蓄として十分活用できるということを、農林水産省が「家庭備蓄ポータル 」で紹介したことで、全国的に広がりました。
非常食だと利用する機会がないまま賞味期限切れになることもありますが、お茶漬けの素や野菜ジュースといった普段から馴染みのあるものなら、フードロスが防げるというのも注目されるようになった要因の1つです。
ローリングストックを取り入れることでどんなメリットがあるの?
賞味期限が年単位のものや非常食は金額的にも割高になりますし、わざわざ災害のために買うというのも負担ですよね。
それが、スーパーで買えるようなものなら無理がないし、日頃から使うものだから無駄もない。お財布に優しいし、特別に用意しなくてもいい手軽さは最大のメリットです。
また、古いものから消費してその分を買い足せばいいので、管理がラクというのもひとつ。防災バッグの中身はうっかり期限が切れていたということも多いもの。
それと、非常時によくある“買い占め”によってパニックになることもないし、非常時にいつもの暮らしができるという点でもメリットは大きいです。
ローリングストックのコツ・ポイントを防災備蓄収納プランナー協会 代表理事の長柴美恵さんが解説
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いつもの暮らし+αで始められる“ローリングストック”を始めよう!
まず、一緒に暮らしている人の1週間分の食品・日用品がどのくらい必要かを把握すること。その上で、自分や家族が好きな食品・使いやすい日用品を1週間分以上ストックすることです。
ローリングストックは、あくまで日常的に使うものを非常時にも役立てることができる分だけ用意しておくことなので、防災リュックに入れるものとは別に考え、普段から手に取りやすい収納場所で管理することがポイントです。
消費した分だけまた買い足せばいいので無駄がなく、誰でも始めやすくとってもサステナブルな備蓄方法といえます。
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何日分をストックすればいいの?
最低限1週間分以上はストックしておきましょう。
よく3日分じゃダメですか?と聞かれるのですが、災害が起きてから3日ではさまざまなものが復旧しないんです。人命救助が最優先だし、道が寸断されれば救援物資も届かない。お店に商品が並ぶのは当分先です。
大概の家庭では、お米や冷凍食品などの普段の予備分で3日分位はどうにかなりますが、問題はそれ以上になったとき。
東日本大震災では3日では物資が届かない地域がたくさんあったし、2019年に起きた千葉の豪雨被害のときは2週間以上電気が復旧しなかったため、冷蔵庫も長い間使えなかった。
1週間以上経って行政が何も支援しないということはないので、まずは1週間分を目安にして欲しいです。
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ローリングストックに向いている食材・種類は?
ローリングストックに向いているのは、乾物、レトルト、米、麺(パスタ・乾麺)、ソース類(トマトソースなど)、汁物(お湯をかけるだけで飲めるもの)、好みの菓子類、飲み物などです。
これらの食材で自分や家族が好きで、よく食べるものをストックしておくようにしてください。
よく「好きなものでいいんですか⁉︎」と驚かれますが、食べたいものをストックしておくことが本当に大事。
なぜかというと、非常時はただでさえストレスが溜まり、体力も気力もどんどん落ちていくから。食事として栄養があることももちろん大切ですが、自分や家族の食欲が増すもの、病気のときでもこれだけは口にできるというものを必ず用意するようにしましょう。
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ローリングストックをうまく循環させるコツ
よく「ローリングストックにチャレンジしたものの、賞味期限を切らしてしまうことが多い」という声があがりますが、うまく循環させるためには、ローリングストックと防災用の備蓄を分けて考えるのがコツ。
分ける基準は、半年以内に使うものかどうか。
半年以内に使うものは、ローリングストック扱いにして日頃から手に取りやすい場所に収納して管理する。それ以外は防災用の備蓄として別にしておくとわかりやすくなります。
収納するときに賞味期限をラベルに書いてすぐ見える位置に直接貼っておくと、ひと目でわかるし後がラクです。
ローリングストックは短期間で循環するものですが、防災用は賞味期限も年単位でまちまち。1年に1回は全体で見直しをするようにしましょう。
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見落としがちな日用品も忘れずに!
食品と違い、トイレットペーパーや歯ブラシなどの日用品は、普段から切らしたときのために予備として数個は買いだめしてあるという方が多いのでは。
非常時を意識した日用品をローリングストックするときのポイントは、使う頻度が高いものは最低1週間以上買いものに行けなくなっても大丈夫なくらいの量をストックしておくということ。
よく災害が起きた後に起こる“買い占め”も見越して、1週間分+αはあるといいですね。
また、ローリングストックとは別の防災用として、常備薬やかかりつけ医の処方箋のコピーは用意しておくのがオススメ。
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意外と忘れがちな非常時の必需品は?
日常的に使うものではありませんが、非常時の生活用品として絶対に用意しておいて欲しいのが、「トイレの凝固剤」です。
生きていく上で欠かせないもので、水・食料のほかに忘れがちなのが、排泄物の処理という問題。断水になると水が流せなくなるし、停電でトイレが使用できなくなることも。
集合住宅の場合、貯めておいたお風呂の水を流すというのも逆流の可能性があるのでNGです。非常時にトイレは使えないというのを前提に、準備をしておきましょう。
簡単!これだけは準備しておきたい備蓄リスト(食料品編)
・乾物
・レトルト(生鮮食品が含まれているもの)
・米
・麺(パスタ・乾麺)
・ソース類(トマトソースなど)
・汁物(お湯をかけるだけで飲めるもの)
・好みの菓子類
・飲み物 など
栄養バランスを考えた上で準備することも大切ですが、最優先すべきは自分や家族が好きなものかどうかと、同居人の人数×3食×7日間の食事がまかなえるかどうか。
非常時は辛いことも多いので、栄養はあるけど嫌いなものではなく、食べたいという欲求が刺激されるものであることが重要。あらかじめどのくらいの量があれば1週間しのげるのか把握しておくと安心です。
また、食材ではありませんが、煮炊きができる「卓上コンロ」があると温かい食事ができるのでオススメです。
簡単!これだけは準備しておきたい備蓄リスト(日用品編)
・トイレットペーパー
・消毒液
・マスク
・歯ブラシ
・液体ハミガキ
・ウエットティッシュ(タオル)
・ベビーオイル
・新聞紙
・ラップ
・ゴミ袋
・ラジオ
・照明(ライト) など
ベビーオイルは保湿として使えるだけでなく、汚れ落としとしても活用できるし、赤ちゃんからお年寄りまで使えるので便利。色々なものを用意するよりこれ1つでまかなえて重宝します。
また、非常時の停電で真っ暗な状態だと本当に気分が沈むので、照明(ライト)はぜひ用意しておいて。懐中電灯だと1点しか照らせないので、ランタンがオススメ。最近は、スマホの充電ができるなど種類も豊富です。
ローリングストック収納のコツを防災備蓄収納プランナー協会 代表理事の長柴美恵さんが解説
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ローリングストックを成功させる、収納管理方法
いちばんのコツは、面倒くさい収納にしないこと! 事細かに収納するとややこしくなって続かないので、大まかに分けるのがポイントです。
それと、非常時に家族全員が同じ場所にいるとは限らないので、誰が見てもどこに何があるかわかる状態にしておくことも大切。
たとえば、レトルトのおかゆがあったとして、「乾物」「レトルト」「米・麺類」・・・のような細かい分類で収納していたらどこに振り分けるか悩みますよね。「主食」「お菓子」「汁物」のような単純な分類にしておくと収納するときも使うときも迷わず済みますよ。

ローリングストックの失敗事例
失敗してしまった方で多いのが、管理しきれないという声。
賞味期限が切れてしまう、買いすぎてしまう、逆にストックがすぐになくなる・・・。
これらはきちんと目的を持って収納していないことで起こります。
ローリングストックの収納では、1ヵ所では入りきらないため、分散収納することになるのですが、単に「入りきらなかったから」という理由で振り分けてしまうと、結局どこに何がどのくらいあるのかわからなくなる。
たとえば、子ども部屋に閉じ込められてしまった場合を想定して1日分のお菓子を子ども部屋にストックするなど、目的を持って振り分けると失敗が少なくなりますよ。ラベリングや必要な量を事前に把握しておくことも重要です。
みんなのローリングストック収納アイデアを大公開!
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キッチン周りには普段食べ慣れたものを
■@sumiko_monotoneさんのコメント
「キッチンの引き出しに、レトルト・缶詰・カロリーメイトなど、普段食べ慣れている物を中心にローリングストック。上から見て、何がどこにいくつあるか分かるように入れています。災害時はゴミの回収もストップするし、食べた缶詰も断水で洗えないので、防臭ポリ袋も用意。上から見て、何がどこにいくつあるか分かるように入れています。」
@sumiko_monotoneさんの投稿を見る

階段下に重たい水や非常用トイレを配置
■@sumiko_monotoneさんのコメント
「階段下収納には2ℓの水が4ケース。ここならケースが倒れても通路を塞ぐことなく安全です。無印良品のファイルボックスにキャスターを付け、非常用トイレとウォータータンクを入れています。」
@sumiko_monotoneさんの投稿を見る

管理のしやすさ重視で、見える収納を意識
■@ymsumaiさんのコメント
「管理のしやすさ重視で、ほぼ見え収納。
1段目:砂糖と塩、粉物、テーブルクロス、ラップホイル系、ジップロック、キッチンペーパー
2段目:お菓子、インスタント食品、スープ類、レトルト食品
3段目:カレールウ系、栄養補助食品、ゼリー飲料、缶詰、ドライフード、お餅、乾麺
4段目:水筒、割り箸類、ストロー、弁当用品、紙コップ、紙皿、ペーパーナプキン
後は、冷蔵庫にもある程度(飲料系、冷凍ごはん、冷凍うどん、パン、野菜、ハム等)ストックするようにしているので、在宅避難になった場合はまず1、2日目は冷蔵庫内のものから。
3~5日目はパントリー内の備蓄でまかなえる目安で補っています。」
@ymsumaiさんの投稿を見る
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災害用備蓄棚を設置し、カテゴリ別に収納
■@minapon1018さんのコメント
「自宅避難になることを想定した「災害用備蓄棚」を2階の納戸に作りました。水や簡易トイレ、食料など、1ヵ所にまとめることで、家族みんなが「どこに何があるのか」分かりやすいようにしています! カテゴリ別のボックスに入れることで、賞味期限、在庫の確認など管理がしやすくなります。スーパーへ買い物に行くついでに、保存がきく食料などを見つけたら買い足すようにしています。」
@minapon1018さんの投稿を見る
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IKEAと無印良品のボックスを活用した食品庫を設置
■@cherryleaf0915さんのコメント
「キッチンに新しく作った食品庫。パントリーがないので、イケアの棚を設置して、無印良品のファイルボックス、IKEAのボックスを引き出し代わりに使っています。ストックはローリングストック法で、普段食べる物など1つ使ったら1つ買うようにして、常に一定量のストックがあるようにしています。限られたスペースなので、レトルト食品は、箱から出して保存袋に箱の表面と裏面を入れて、賞味期限が分かりやすいように表に記入しています。」
@cherryleaf0915さんの投稿を見る
ライフスタイル別のおすすめ備蓄品を防災備蓄収納プランナー協会 代表理事の長柴美恵さんが解説
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1人暮らしの女性にオススメの備蓄品
・生理用品
・下着(ブラトップなど)
・メイク用品 など
被災地では性被害が起きているという現実も。普段は親切な人でも非常時に態度が急変することもあるので、女性の場合はまず身を守る体制を整えておくためにも、下着などはきちんと用意しておきましょう。
また、意外に思われますが、メイクをしていないことで塞ぎがちになったりすることも多いので、メイク用品もあると気持ちがポジティブになりますよ。非常時だからあれダメ、これもダメということはありません。

乳幼児がいる家庭にオススメの備蓄品
・オムツ
・ミルク
・授乳ケープ
・抱っこ紐・おんぶ紐
・好きなおやつ
・スプーン・ストロー
・おもちゃ(遊具) など
赤ちゃんが大好きなおもちゃなどの遊具はマストです!
赤ちゃんが泣くのは当然のことなので、本来は周りがそれを認識することが大切なのですが、非常時では余裕がなくなり神経質になってしまうのも事実。
泣き声でピリピリしてしまうこともあるので、赤ちゃんがリラックスして楽しめるものも用意しておきましょう。
また、乳児のオムツは、あっという間にサイズが変わっていくものなので、定期的にサイズの入れ替えをしましょう。

ペットがいる家庭にオススメの備蓄品
・キャリーケース
・フード・飲み物
・おしっこシート
・オムツ など
フード・飲み物は、私たちの食品と同じように、最低でも1週間分はローリングストックしておきましょう。
また、普段おしっこシートや外で排泄するというペットでも、非常時にはそこでうまく排泄できないこともあるので、オムツを用意しておくのがオススメです。

取材協力・監修/一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会 代表理事 長柴美恵さん
2006年3月に「収納ドクター」の看板を立上げる。『安心と快適で心が輝く住まいに変える』ことを使命とし、モノ、紙、時間を整理するコンサルタントとして、一般家庭のみならず、オフィス整理改善、企業との提携事業など活動幅を広げてきた。2012年10月、東北応援チームを設立(代表 長柴美恵)。仮設住宅にて収納イベントや仮設住居での収納作業など、5年に渡る活動の中で、災害対策と防災備蓄の必要性を感じる。3年間の実行検証を繰り返した結果、「防災備蓄が当たり前の日本」を目指し、2016年6月一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会を設立。防災備蓄のための収納プランナーの育成講座を行っている。
2018年度農林水産省『あって良かった!食糧の家庭備蓄懇談会』委員を務める。企業、団体様での出張講演、メディア出演多数。3人の子どもを育て上げた母でもある。
●防災備蓄収納プランナー協会
https://bichiku-shunou.or.jp/
https://www.facebook.com/bousaibichiku.shunou/

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度重なる未曾有なできごとに、この先起こるかもしれないことまで考えると、ますます不安に。そんなときこそ、一気にどうにかしようと思わず、日々の暮らしを見直すところから始めてみて。無理せず、楽しく、ちょっとオシャレに。いつもの暮らしの+αで、いつかのために、今できること。そんなサステナブルな備え方を、一緒に考えてみませんか。
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SDGsと言われても「それって何なの?何から始めればよいの?」と、難しく考えてしまう人も多いはず。でも実は、毎日の暮らしのなかにヒントがたくさんあるんです。食材をムダなく活用するのも、エコバックを持ち歩くのも、サステナブルなSDGsアクションのひとつ。そこでオズモールでは、楽しみながら始められる「#サステナブルチャレンジ」をガイドしていきます。ぜひ参考にして、できることから始めてみて。
WRITTING/AYAKO SASAKI