オズマガジン古川編集長の「F太郎通信2017」Vol.06 2016年6月12日発売7月号「カフェ街さんぽ」特集

更新日:2017/04/30

この号からモデルもKIKIさんからKanocoさんにバトンタッチ

オズマガジンのバックナンバーを少し楽しく読むためのコラム

 こんばんは。日曜日。どんな週末でしたか? いい週末だったらいいのですけど。仕事だった方もきっといらっしゃいますね。おつかれさまでした。

 6月12日の創刊30周年を記念した、オズマガジン過去約100冊の読み放題キャンペーンを開催するに伴い、毎週日曜日の夜に配信させていただいたこのコラムも今回で最終回です。
 このサイトのほかの記事に比べて、目を引く写真も、はっきり役に立つことも、便利なこともないし、なによりこんなに長い文章のコラムを読み続けてくださってありがとうございました。回を追うごとにたくさんの方が温かいコメントを寄せてくださったことが、とても励みになりました。

 6月12日から、オズモール内であらためて「オズマガジン編集部」としての情報発信を始めようと考えています。その時はまた読んでいただければと思います。

 編集長の僕が100冊のオズマガジンから思い入れの深い号を6冊選ぶというこの企画でしたが、最後の1冊は昨年6月のリニューアル号をご紹介させていただきます。いつもどおり、最初のページに寄せたコメントから。

こんにちは。お元気ですか?
オズマガジンを手にとっていただき、ありがとうございます。
お気づきのとおり、オズマガジンは今月から新しくなりました。

紙もウェブも変化のときに、
あらためて深く意識したことがあります。
それはわたしたちが存在する「意味」のことでした。
ただの情報はそれこそもう掃いて捨てるほどあるこの世界で、
「わたしたちはなにがしたいんだっけ?」そう自らに問いかけたときに、
考えるまでもなくいつも心の中にあったのはシンプルな思いでした。
それは、本を読んだり、サイトを訪れてくれたあなたの毎日が、
いつもの日より少しだけ「いい1日」だったら嬉しい、ということ。

毎日毎日、最高に「いい1日」が続けばいいけど、そうもいきませんね。
やらなくてはいけないことや、与えられた役割、思い込み、すれ違い、
ふつうに生きていくだけでも、わたしたちは多くのことを抱え込みます。
だからせめて、あなたがオズマガジンを読んで町に出かけた日や、
オズモールで予約したレストランで大切な人とゴハンを食べた日、
眠る前にベッドの中で「今日はいい1日だったなぁ」って思えたら、
それがわたしたちにとってなにより嬉しくて、
それこそがわたしたちの存在する意味だと思うのです。
それはメディアにできる素敵なことで、
ほとんど唯一のことだと思います。

これからオズマガジンも、オズモールも、
わたしたちのすべてのコンテンツとサービスは、
あなたの「いい1日」のきっかけになれたらと思います。
誰かの「いい1日」が増えれば、きっと世界はその分だけ明るくなるし、
その小さな光の集積だけが、この世界を明るくできると思うのです。
わたしたちの毎日をほんとうの意味でキラキラさせられるのは、
大きな力ではなく、きっとものすごく小さなこと。
たとえばあなたのそばで大切な人が笑ったら、あなたも嬉しくなる、
そういう、些細だけどリアルなことだと思うのです。

では、いい1日を。

 オズマガジンはずっと「日常をていねいに」という価値観を大切にしてきました。ひとつ前のリニューアルから、10年間ずっとです。

 でも、ボブ・ディランも歌っていたように時代は変わるし、わたしたちも変わっていきます。あるいは東日本大震災や熊本地震のように、意思を超えて抗いきれない自然の驚異のようなものも日常には潜んでいます。スマートフォンの普及で、日々の時間の使い方も前とはずいぶん変わりました。このように、わたしたちはある意味では変わり続ける世界の中に生きています。そしてその変化のスピードは、日に日に速度を増しているようにも思えます。

 そのような世界の中で、情報取得の方法もずいぶん変わっていきました。当然わたしたち雑誌も、その世界の変化に合わせていかなくてはいけません。

 でも一方で、どれだけ時代が変わっても、オズマガジンが変えてはいけないものがあると、いつも頑固に思っていることがあります。直感的に信じているものがあります。それが「日常をていねいに」という言葉です。

 この大きくて早くて強い変化においていかれないようにと、わたしたちが流され、すべての変化に対応しようと努力をしても、それは間違いなく消耗戦にしかなりません。なぜならば変化というものは、次の変化を前提にしていることが多いからです。最新のスマートフォンの画面の大きさは次のモデルチェンジでまた変わることを、僕たちは経験的に知っています。トラックの先頭を走っていたはずのランナーも、視点を変えれば周回遅れの走者になるのが世界です。僕たちはもう、新しいものはすぐに古くなることを知っているのです。

 だからこそ、わたしたちは「変えないことと、変えていくもの」をはっきりと分けなくてはいけないと思いました。そのしなやかさが、リニューアルの時のオズマガジンに求められていました。

 僕たちが考えて考えて導きだした仮説はこうでした。

 僕たちが信じてきた「日常をていねいに」という言葉は、オズマガジンの価値観であり、大げさにいえば生きる姿勢の表明でした。まなざしのありかたを言語化したものでした。なにより大切にしてきた言葉です。この軸を変えるべきではないという気持ちは、絶対的な自信として持っていました。なぜなら定点的に、愚直なまでに、毎月同じ価値観で本作りをしているうちに、オズマガジンを買ってくださる多くの方が「その価値観に1票を投じてくれている」という手ごたえのようなものを僕らは感じられるようになっていたのです。読む人との信頼関係が、この10年でできつつあるという感覚がありました。それは本当に嬉しいことでした。

 でもそれはたぶん、世の中に発信するメッセージにはなりきれていませんでした。わたしたちの「存在意義」にまでは届いていなかったのです。いわばそれは、旗に描かれた文字でした。その旗が風になびいているのが見える人は、旗に書いている文字を読むことができる。もちろん作り手であるわたしたち編集部は、その旗を自分たちで持っているから見える。オズマガジンを好きで買ってくれる人も、その旗に描かれた文字を読もうとしてくれるから、読める。

 でもその言葉は、ある意味ではその場所に留まっていました。その言葉は「もう少し遠くまでいく」ための自走力を持っていませんでした。旗が本だとしたら、本屋さんを訪れる人の数も、本屋さん自体の数も、ずいぶん減っていきました。必然的に、その旗が人の目に触れる機会も減っていきます。

 オズマガジンには新しい「言葉」が必要でした。「日常をていねいに」の先にある価値。わたしたちが望んでいる世界のあり方を言語化したもの。それをわかりやすく世界と共感できるだけの言葉が必要でした。それは変えるのではなく、探し出すというイメージだったと思います。もっと自走して、その言葉自体が自分で広がっていける言葉を。普遍的で誰もが口にできる言葉を。そしてそれが、世界を今より少しだけ明るく変えていけるイメージを持つことができる言葉を。

 「僕たちは、誰に何を伝えるために本を作っているのか?」その根源的な問いを自らに課し続けながら、2016年の6月は刻一刻と近づいてきていました。新しいオズマガジンに、僕たちは新しい言葉を託すことができるのか。

 ある日、答えは言葉にされました。それが「いい1日を」という、シンプルで魔法のような言葉です。誰でも知っている、ありきたりで使い古された言葉です。でもこの言葉が、わたしたちがこの世界で本を作り続けていく「意味」そのものでした。どれだけ議論を重ねても、どれだけ仮説に仮説を積み重ねても、これ以上にシンプルで、わたしたちの願いを表してくれる言葉はありませんでした。それは議論からも合議からも生まれない言葉でした。

 僕たちがやっていることは、「ていねい」という価値観や目線で、この世界に散らばっている「よりみち」を集めて、誰かの「いい1日」のきっかけになること。だったのです。

「いい1日を」という言葉は、自分以外の誰かを思う言葉です。この言葉は、いま、オズマガジンのメッセージになりました。自分のことを考えることに忙しい現代に、自分以外の誰かのことを思う。

 別れぎわ、さよならの変わりに「いい1日を」という言葉をかけるだけで、世界が少しだけ明るくなる。自分だっていい気持ちになる。「いい1日を」という言葉があちこちで交わされる世界は、きっと今よりその言葉の数だけ、昨日よりいい世界だと思うのです。

 もちろん、「世界が平和でありますように」的な一般論を語るつもりはありません。ご存知の通り、いろいろなことがある日常です。わたしたちはなかなかひとつになれません。それぞれややこしい問題を抱えています。それらをすべてきれいに解決することなんてなかなか難しいし、ていねいなだけではいられないこともあるでしょう。誰かを憎んだり、自分を責めたり、そんな夜もあたりまえにあるのがわたしたちが住む世界です。

 だからこそわたしたちは、そういう人の悲しみや弱い気持ちのそばにいられる、「世界の美しさの気配」をちりばめた本を作りたいのです。そういう気持ちのときに、読んでくれる人が安心できる本でいたいのです。

 そしてもしオズマガジンを読んで、オズモールを使って、自分に「いい1日」が訪れたら、そのいい気持ちを別の誰かの「いい1日」を祈る心に少しだけわけてあげて、声に出してほしいのです。

「いい1日を」

 そのきっかけに、オズマガジンがなれたら。それが、僕たちが30周年を迎えるいま考えていることです。その言葉はきっと、遠くまでいける言葉です。最後には世界をやさしく変えてくれるかもしれない、マジックワードです。少なくとも僕らはそう信じています。


 40周年、50周年、そのときみなさんとまた一緒に、オズマガジンの話ができたら嬉しいですね。タフな毎日ですが、それまで機嫌よく生きていきましょう。10年後、そのとききっと僕はひとりの読者として、オズマガジンのメッセージを受け取りたいと思います。その日が、今から楽しみです。

 ものづくりというのは魂です。最後のところでそのものに宿る魂だけが、本当の意味で誰かの心の深いところまで届きます。オズマガジン編集部が万能な編集部かというと、きっとまだまだスキルが足りないところはあると思います。でもオズマガジン編集部は、ここに並べられた100冊の雑誌において、そしてここにはもうないそれ以前の雑誌においても、魂を別の場所において雑誌を作ったことはいちどもないと断言することができます。

 そういう意味では、これらの雑誌の情報は、まだ生きていると思います。新しい古いでいえば、古くなっている情報や、もう使えない情報も含まれています。そこはご容赦ください。ただ、魂のこもった本であるということは、自信を持っておすすめします。

 バックナンバーの無料での公開は5月11日までです。ぜひ読んでいただけたらと思います。

 毎号、長い文章におつきあいいただき、本当にありがとうございました。あらためてオズマガジンが30年も続けられてきたのは、オズモールが20年以上続けられてきたのは、わたしたちの情報を使ってくれる、これを読んでいるあなたがいたからです。心より御礼申し上げます。

 ありがとうございました。そしてこれからも、どうかよろしくお願いいたします。

OZmagazine8年分無料読み放題キャンペーン実施中

【キャンペーン1】
2017年5月11日までの期間限定で、OZmagazineの2008年7月号~2017年2月号まで、無料でまるごと読み放題となります。(OZmagazineはマイライブラリ内で読むことができます)

【キャンペーン2】
OZmagazine読み放題キャンペーンご利用の皆様から「OZのプレミアム予約」の支払に利用できるギフトチケット(商品券)5000円分を抽選で10名様にプレゼント。ホテルやリゾート、レストラン、ビューティサロンのなどのご予約に利用いただけます。 
※キャンペーン終了2週間以内に、ご登録時のメールアドレスに当選結果をご連絡いたします。
※ご連絡がとれない場合は、次点候補者を繰り上げ当選させていただきます。

  • LINEで送る
※記事は2017年4月30日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

TOP