和食と一緒にもっとおいしく。京都で日本酒
冬が近づくと、日本酒がおいしい季節のはじまり。秋のお出かけスポットとしても人気の京都は、酒造りに適した水源に恵まれていることから、長い酒造りの歴史があるのだとか。また、和食も京都ではぐくまれた伝統文化の一つ。せっかくだから、おいしい和食と一緒に、京都のお酒を楽しんでみては?
更新日:2022/11/22
「京都の日本酒」の魅力とは?
日本有数の歴史と、生産量を誇る土地
お隣の兵庫に次いで全国で2位の日本酒生産量を誇る京都。実は酒造りの歴史は兵庫よりも古く、日本で稲作が始まった弥生時代から造られているという。中でも伏見は酒造りの名所として知られていて、360年以上に渡って続く蔵元も。
酒造りが盛んになったのは、豊臣秀吉が伏見城を築いた安土桃山時代。城下町として栄えた伏見は酒どころとして知られるようになり、江戸時代に入ってからは物流の拠点となったことでますます発展。明治時代には東京を始め全国に広まっていった。
まろやかな地下水から淡麗な味わいに
京都の酒造りに欠かせないのは、良質な地下水。特に、京都の酒どころとして歴史ある伏見はかつて「伏水」とも書かれたほど水源に恵まれた街。現在も地下水の湧き出る井戸が街のあちこちに点在していて、自由に汲めるところも多いそう。
伏見の水は鉄分が少なく、カリウムやカルシウムなどをバランスよく含んだ中硬水で、酒造りには最適。この水で仕込んだ酒は酸味が少なく、まろやかな味わいが特徴で、しっかりと力強い味わいの兵庫(灘)の酒に対して「灘の男酒、伏見の女酒」という言葉が生まれたという。
京料理との相性もぴったり
豊かな水源は京料理の発展にも影響を与えてきた。他の地域と比べると硬度が低い京都の水は、出汁に用いる昆布の旨みが出やすく、シンプルな味付けで十分においしいといわれている。
口あたりが柔らかく、端麗な味わいの京都の銘酒は、そんな京料理と相性抜群。京野菜をはじめ、春は山菜、夏はアユやハモ、秋はマツタケ、冬はカニやフグ・・・と四季折々の素材をふんだんに取り入れ、それぞれの持ち味を活かした上品な料理のおいしさをいっそう引き立ててくれる。
和食と一緒に。京都の日本酒を味わえる店
エリアごとのおすすめ銘柄&飲めるお店
すっきりと爽やかな飲み口【富翁 純米酒 プルミエアムール】
(伏見エリア/北川本家)
1657年に創業した『北川本家』は、伏見でも有数の歴史を誇る酒造。代表銘柄「富翁(とみおう)」の柔らかな酒質は、繊細な素材の旨みを活かした京料理にぴったり。
伝統を受け継ぐ一方で新しい酒造りにも力を入れていて、この「富翁 純米酒 プルミエアムール」は、従来にはない味わいの日本酒を追求して完成したお酒。杜氏曰く、“普通の日本酒より2倍甘く、3倍酸っぱいお酒”に仕上げられているのだとか。白ワインにも似たふくよかな香りと甘酸っぱさは、和食だけでなく、イタリアンやフレンチとも相性抜群。上品な出汁のおいしさを引き立ててくれる。
【編集部おすすめ・飲めるお店】祇をん 豆寅(祇園四条/和食)※「富翁」を提供。プルミエアムールは時期により提供あり、照月(北大路/和食)
まろやかな味わいはどんなお料理にもぴったり【聚楽第 純米吟醸】
(洛中エリア/佐々木酒造)
京都御所や晴明神社、本能寺がある洛中エリアもかつては酒造りが盛んだった場所。豊臣秀吉が建てた邸宅、聚楽第があった場所で明治時代より酒造りを行う『佐々木酒造』は、俳優の佐々木蔵之介さんの実家としてもおなじみ。仕込み水の「銀明水」は千利休が茶の湯にも使ったといわれているのだとか。
一年を通してさまざまなお酒が楽しめるが、初めて味わうなら「聚楽第 純米吟醸」がおすすめ。京都産の祝米(いわいまい)を主原料に、ろ過を控えめにすることでお米の旨みと香りを閉じ込めたお酒は、まろやかな口当たりとキレの良いのど越しで、食中酒にもぴったり。
【編集部おすすめ・飲めるお店】日本料理 隨縁亭(烏丸御池/和食)
しっかりとした酸味と旨み【玉川 自然仕込 純米酒(山廃) 無濾過生原酒】
(洛北エリア/木下酒造)
『木下酒造』は1842年より続く酒蔵で、現在の当主は11代目。イギリス人のフィリップ・ハーパー氏が杜氏を務めることでも知られている。こちらのお酒の銘柄「玉川」は、創業当時、蔵のそばに玉砂利を敷き詰めたような川があったことに由来するそう。
なかでも蔵元イチオシの「玉川 自然仕込 純米酒(山廃)無濾過生原酒」は、蔵に付いた天然酵母で仕込むお酒。しっかりとした酸味と深い旨みがあり、コクのある味わいはファンが多い。熟成や温度の変化によっても味わいの変化が楽しめるのもこちらのお酒の特徴で、冷酒や常温、ロック、燗酒などぜひ飲み比べてみて。
【編集部おすすめ・飲めるお店】鉄板料理 花六/ホテルカンラ京都(五条/肉料理)、柾木(二条/和食)
日本酒Q&A
日本酒に旬はある?
秋に収穫した酒米を原料に10月~3月頃にかけて造られる日本酒。蔵元によって違いはあるけれど、多くの蔵ではその年の冬や翌年春に、できたての新酒「しぼりたて」の銘柄を販売。また、春に火入れした日本酒を涼しい蔵内で熟成させ、秋に提供する「ひやおろし」もファンが多い。
京都の日本酒の特徴は?
ほどよくミネラルやカルシウムを含んだ中硬水で仕込む京都の地酒は、芳醇な香りやまろやかな味わい。「灘の男酒、伏見の女酒」といわれるようにキリっとキレのある灘(兵庫)のお酒と比べると口当たりがやさしく、日本酒を飲み慣れていない人にもぴったり。
京都の代表的な日本酒・銘柄は?
360年以上に渡り、伏見の名水を使って仕込んでいる『北川本家』の「富翁」や、洛中で唯一酒造りを行っている『佐々木酒造』の「聚楽第」、イギリス人のフィリップ・ハーパー氏が杜氏を務める『木下酒造』の「玉川」など。中にはこれらの利き酒ができるもレストランもあるので、個性豊かな京都のお酒を飲み比べてみて。
こちらもおすすめ。はじめての京都・町家ごはん
京都を旅するなら、歴史ある街並みにたたずむ「京町家」での食事はいかが? 伝統的な家屋を活かした空間でお庭を眺めながら、和食やおばんざい、京野菜のイタリアンなど、京都ならではの旬を堪能できるひとときがここに。ランチ、アフタヌーンティー、そしてディナーと、シーンや気分に合わせて選んでみて。
WRITING/MINORI KASAI