「Aile Blanche」のフレンチを体験。『魔法』と名の付く絶品フォアグラと日本ワインのマリアージュをグルメジャーナリストが解説
フレンチ特集

「Aile Blanche」のフレンチを体験。『魔法』と名の付く絶品フォアグラと日本ワインのマリアージュをグルメジャーナリストが解説

更新日:2025/06/17

麻布十番で長年愛される「Aile Blanche(エル ブランシュ)」は、伝統的な味わいを大切にしつつモダンな表現のフランス料理と日本ワインのペアリングが自慢のレストラン。フランスや日本の旬の食材を選び抜き、”温故知新”をモットーに日々料理を創造する小川智寛シェフのコースが楽しめます。絶品フォアグラ料理など、2つの国を融合させた新しい食体験とは? グルメジャーナリストの東龍さんの解説とともにお届けします。

グルメジャーナリストの東龍さんが「Aile Blanche」のフレンチを体験&レビュー

麻布十番のメイン通りのビルに入る「Aile Blanche」。その扉を開けると、ナチュラルながらも洗練された心地よい空間が迎えてくれます。臨場感あふれるL型カウンター席は、本場フランスと日本を知り尽くし、多方面で活躍する料理人である小川智寛シェフの技を間近で楽しめる特等席。また、落ち着いたテーブル席もありシーンに合わせて席を選べるのは嬉しいポイントです。

東龍さんは4年ぶりの再訪だそう。「何と言っても、他では体験できないスペシャリテの『魔法のフォアグラ』が楽しみでした。以前いただいた時のとろけるようなテクスチャーや蜜のような味わいは今でも忘れられません。また、前回はフランスワインを堪能しましたが、最近では素晴らしい日本ワインもたくさん取り揃えられているようなので、以前とは違うペアリングに期待しています」(東龍さん)

コース内容は少しずつ変わり、1カ月から1カ月半で新しくなるので何度でも足を運びたくなる、そんな魅力的なレストランです。

この日は、旬の食材をふんだんに使用した全8皿のおまかせコースと、乾杯のシャンパン、そして厳選された日本ワイン4杯を味わえるプランをいただきます。

コースの幕開けは、フランス・ブルゴーニュ地方の伝統的な郷土料理、グジェールから。グジェールとは、シュークリームの生地にチーズを詰めたフィンガーフードです。乾杯に選ばれたのは「アンドレア・バルテル」という造り手のシャンパーニュ。

「シュー生地はさっくりとした焼き上がりで、軽快な食感が楽しめます。ワインは、樽の中で36カ月という長期熟成を経ているため、複雑味が感じられますね。果実味が豊かに広がり、最初の一杯から幸せな気分に。グジェールの塩味とチーズのコクともマッチして、食欲を心地よく刺激してくれます」(東龍さん)

アミューズには、「大山鶏砂肝とセミドライトマト カラマンシーソース」が登場。鳥取県の銘柄鶏「匠の大山鶏」の砂肝を主役にした前菜です。砂肝のコリコリとした食感が心地よく、噛むほどに旨味がじんわりと広がります。バジルの香りとも相性が良く、エキゾチックなカラマンシーソースが全体の味わいを華やかに引き立てています。

「『Aile Blanche』では、フランスの食材に加えて、日本全国の生産者をリスペクトして、各地の旬の食材も多く使っていますね。素晴らしいこだわりだと思います」(東龍さん)

次に運ばれてきたのは、まるでアートのような一皿「ソデイカのラビオリ仕立て ベルガモットソース」です。長崎県のソデイカをスライスしてラビオリ風に仕立てた一品。奥から順に、タプナードとポルトワイン、サワークリームとキャビア、柑橘類と、3つの変化が楽しめるようになっています。

「もっちりとしたイカの食感が良いですね。それぞれに異なるマイクロハーブを添えていて、細部にまでこだわりを感じます」(東龍さん)

合わせるワインは、「千葉ヴィンヤ-ド」の「ヒノデダンケ ブラン 2023」。千葉、と言っても生産地は北海道岩見沢市で、千葉信児さんという方が作っているワインです。さまざまな白ぶどう品種を使用していて軽やかな味わい。繊細なイカにきれいに寄り添います。

続いて提供されたのは「フランス産路地ものホワイトアスパラガス」。ビニールハウスや温室などの施設を使わずに、屋外の自然の気候の中で栽培されたフランス産のホワイトアスパラガスを主役にした一皿です。ホワイトアスパラガスをやわらかく茹で、白カビタイプのチーズであるブリ・ド・モーを乗せてグラタン風に仕上げています。

この一品に合わせるのは「ウッディファーム&ワイナリー」の「アルバリーニョ 2023」。華やかな香りと果実味豊かな味わいが感じられるワインです。

「ブリ・ド・モーの持つヘーゼルナッツのような香味がホワイトアスパラガスの豊かな味わいを引き出しますね。しっかりした果実味のあるワインともぴったりです」(東龍さん)

いよいよスペシャリテの「魔法のフォアグラ」が運ばれてきました。「魔法」という印象的な名前は、常連客の作家さんが名付けたのだそう。何年もの月日を経て、シェフの理想の形に辿り着いたというこの一皿は、丁寧に育てられた鴨を厳選し、鉄板で焼いた後オーブンでじっくりと火入れされています。

「厚みがあって、プリンのようなやわらかな弾力があり、口溶け感が抜群。シェリービネガーのソースとカラメリゼされたイチゴは、心地よい酸味と甘みが感じられて、フォアグラの旨味が増幅します。まさに『魔法』という名に相応しいフォアグラ料理ですね。」

「食器にも注目を。半磁器のお皿の素朴さが、フォアグラのテクスチャーをより優しく見せます。名刀の村として有名なフランス・ライヨールのナイフによって、フォアグラをストレスなくカットできて、断面も潰れないので味わいも食感も全く損なわれません」(東龍さん)

この至福のフォアグラに合わせるのは、「ココ・ファーム・ワイナリー」の「こころみシリーズ ケルナー・シエスタ 2021」という貴腐ワイン。黄桃やはちみつの香りがあり、とろけるような甘味と余韻が続きます。ほどよい酸もあるので、フォアグラに寄り添いながらも、後味はすっきりとまとめてくれます。

多幸感にあふれる中、山形県の米沢豚を絶妙に火入れした「米沢豚のロティ フランボワーズソース」をいただきます。

米沢豚ならではの上品でさっぱりとした味わいが特徴的。付け合わせには、春キャベツと舞茸に加え、フランス産の甘みが凝縮されたグリーンピース「プチポワ」、そしてほのかな苦味がアクセントとなるイタリアのタンポポの葉が添えられています。合わせるワインは、「中央葡萄酒」の「ヤマナシ・ド・グレイス 2022」。マスカット・ベーリーA種の赤い凝縮した果実味を感じられます。

「優しいスパイスの香りと、きめ細かいタンニンが、上質な味わいの米沢豚、そしてフランボワーズソースときれいにマリアージュしていますね」(東龍さん)

コースの締めくくりを飾るのは、華やかな「チェリームース ピスタチオソース」。透明なガラスのプレートに、淡いピンク色の桜のゼリーが瑞々しく映えます。口に運ぶと、ジュレの優しい酸味と濃厚でコクのあるピスタチオソースが良いコントラストを生み出します。

食後の小菓子には「トリュフチョコ ブールドネージュ」をいただきます。一口サイズの可愛らしい焼き菓子で、コーヒーとの相性も抜群でした。

グジェールから始まり、スペシャリテのフォアグラ、肉料理、そしてデセールと、充実したフルコースでした。また、日本ワインならではの繊細な香りや味わいが、料理の持ち味を引き出していたのも印象的でした。ちなみに、オプションでフロマージュを追加できるので、チーズ好きやワイン好きはぜひオーダしてみましょう。

今回はカウンターでディナーを楽しみましたが、オーナーシェフ小川智寛さんが料理を仕上げる姿を劇場の最前列にいるかのように眺めることができるのも楽しく、また、フィロソフィーが感じられる説明にも心が踊るのでおすすめですよ。

実弟であるソムリエの小川雅之さんは丁寧にワインの解説してくれるので、ワインに詳しくない方でも納得してペアリングを楽しめて、豊かで記憶に残る体験となるはずです。

グルメジャーナリスト 東龍さんの注目ポイント

1,オリジナリティあふれる「魔法のフォアグラ」と厳選した日本ワインが光るレストラン
フォアグラとワインという、オーセンティックなフレンチを代表する要素でありながらも、他ではなかなか体験できないペアリング体験ができます。フォアグラや日本ワインが好きであったり、さまざまなフレンチを体験したことがあったりする方ほど驚きは多いと思います。

2,日本ワインの奥深さを体感できる
フランスワインもたくさん用意されていますが、日本のワインがとても充実しています。ほかでは出会えないようなワイナリーのワインもあるので、ワイン通の方にも満足できるはず。

3,さまざまなシーンで訪れることができる
18時から20時はコース料理とワインのペアリングが楽しめて、カウンターではデート、テーブルでは友人との集まりや接待に最適です。20時からはワインバーとしてグラスワインと料理が楽しめるので、一人でふらっと気軽に寄るのもいいですね。

他にないフレンチディナーの体験ができるので、さまざまな機会にぴったりフィットします。

「Aile Blanche」シェフ 小川智寛

箱根オーベルジュ・オーミラドーをはじめとする国内の有名店で修行した後、24歳で渡仏。5つの星付きレストランで約3年間の研鑽を積み、帰国と同時に都内のフランス料理店ラフェクレールのシェフに就任。2007年3月に麻布十番にてエルブランシュを独立開業。現在、東京のエルブランシュと、福井の古民家をリノベーションしたLULLの2つのレストランを経営しながら企業のレストラン監修やプロデュースも行っている。

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グルメジャーナリスト 東龍さん

お話を聞いたのは・・・
グルメジャーナリスト 東龍さん

プロフィール
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。
特に好きな料理ジャンルはフレンチ、鉄板焼き、鮨、日本料理。お酒はワインと日本酒を愛飲のかたわら、ビールやウイスキー、食後酒やカクテルにも造詣が深い。
美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。2025年6月27日に「レストランビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)が発売予定。
X(旧Twitter):@toryu76
Instagram:toryu76
公式HP:グルメジャーナリスト東龍のサイト

店舗DATA

スポット名
Aile Blanche
電話番号
0354394338 0354394338
住所
東京都港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番 5F
営業時間
18:00~23:00(LO料理20:00)
※20:00以降はワインバーとしてグラスワインとおつまみを提供
定休日
日曜日 ※月曜が祝日の場合は営業、火曜を定休日とします
交通アクセス
東京メトロ南北線「麻布十番駅」4番出口より徒歩3分
取材ディナーコース内容
【Menu Pairing】前菜、鮮魚、肉料理など全8皿+乾杯シャンパン+日本ワイン4杯
■チーズを詰めたグージェール
■はじめの一皿
■契約農家から届いた野菜を中心とした前菜
■季節のスープ
■全国の漁港から届く鮮魚の料理
   または
スペシャリテ「魔法のフォアグラ」(追加料金あり)
■アルチザン(職人)と呼ばれる生産者の食材を使用した肉料理
■エルブランシュ限定の特別なアシェットデセール
■トリュフチョコ、ブールドネージュ
料金
【Menu Pairing】前菜、鮮魚、肉料理など全8皿+乾杯シャンパン+日本ワイン4杯:1名26200円
【季節のショートコース】前菜、フォアグラ、デセールなど全7皿:1名13200円
【Menu Blanche】前菜、鮮魚、肉料理など全8皿:1名18700円
※すべて税・サ込
ホームページ
公式サイト

オズモールからWEB予約可能。フランス料理店一覧

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PHOTO/TORYU WRITING/NANA TABARA

※記事は2025年6月17日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります