日本の食材と日本のワイン。地上200mで見つけた“ジャパニーズフレンチ”とは
新宿から京王新線で1駅、初台駅直結の東京オペラシティタワーにあるレストラン「一味真(いちみしん)」。その字面から、思わず和食のお店?と思ってしまったのですが、日本の食材と日本ワインにこだわった“ジャパニーズフレンチ”と称するスタイルだとか。そんな気になるお店情報をキャッチしたので、実食してきました。
更新日:2016/12/02
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シックで落ち着いた、大人のディナーへ誘ってくれるエントランス
そこは、地上200mに位置する東京オペラシティタワー53階。2階にある高層階専用エレベーターで上がります。
「一味真」と掲げられたエントランスは、レストランフロアの中でも、ひときわ上質な雰囲気が漂い、すぐに気が付きました。ブラウンのアーチを通り、さっそく店内へ進むと、目の前には窓一面のパノラマ夜景が。
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天井や壁など随所に和の要素を取り入れた、シンプル&モダンな店内
左から東京タワー、六本木ヒルズ、お台場や羽田空港、横浜ランドマークタワーに、三軒茶屋のキャロットタワー・・・。ある程度、イメージはしていましたが、これだけシンボリックな夜景をさえぎるものなく望めるとは、想定外!
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窓一面にきらめく夜景が広がり、天空レストランのよう
景色を楽しめるようにテーブル席の床を少し高くする工夫がされているようで、窓から2列目のカップルシートでも十分に堪能できます。席と席の間隔もとてもゆったりで、自分たちのディナータイムを大切にしてくれているように感じました。
仕事柄、夜景に見慣れている私ですら、久しぶりにテンションの上がるビューは、これから出てくるお料理でガッカリしなければいいな、と内心思ってしまったほどです(ごめんなさい)。
そんな小生意気な思いは、1品目のアミューズで即座に払拭してくれました。
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煙が閉じ込められたガラスドーム型の蓋を開けると・・・
ガラスドームに覆われたプレートが運ばれ、蓋が開いた瞬間、食欲がそそる燻製の香りがふわ~。思わず声をあげてしまいました。「ひと口でどうぞ」と登場したのは、ほうじ茶の葉っぱに載せられたミニタルト。
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落ち葉に見立てた盛り付けも遊び心あるアミューズ
上質な脂をまとったサンマと、ナスとオリーブのペースト、プチトマトのほどよい酸味が融合し、口の中でも燻製の深みを感じられた、はじめて出会うお味でした。小さいのに、なんて存在感のある秋らしい1品なのでしょう。
日本産ワインが約400種。国内トップクラスのラインナップ数
このアミューズと一緒に、乾杯で用意してくれたのは、山形・高畠ワイナリーの「嘉」というスパークリングワイン。スタートにふさわしい、華やかでフルーティーな香りが、とても好みでした(実は、こちらにお伺いした直後に山形へ行く予定があったので、しっかりお土産用に買って帰ってきました)。
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徹底した品質管理のもとで眠るワインは、地域別に並んでいるそう
専用のワインセラーに常時保管されているワインはすべて日本産で、その数は約400種。国内トップクラスのラインナップ数を誇ります。1995年世界最優秀ソムリエに輝いた田崎真也さんのセレクトで、北海道から東北、甲信越、関西、中国地方まで、幅広く揃っているそうです。
お料理2皿目は、お店のスペシャリテという「ウナギのテリーヌと蒲焼き」。まさかフレンチでウナギの蒲焼きが出てくるとは! “ジャパニーズフレンチ”といわれる、独創的なメニューが垣間見えはじめました。美しいミルフィーユ状のテリーヌは、十六穀米とウナギの蒲焼きを交互に重ね合わせ、キャベツで包み込まれています。ふわふわのウナギと、甘いタレがお米をくるむようで、上品なフレンチ流・うな重みたい。
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(左)ウナギのテリーヌと蒲焼き/(右)フルートグラスに注がれたスープ
続いて提供されたのは、フルートグラス・・・ですが、ワインではなくスープ。上の泡は、温かいじゃがいものスープで、下のクリーム色をしたものは冷たい栗のスープなんです。
「一気に飲み干してください。はじめは熱いんですが、大丈夫ですよ」と言われたものの、猫舌の私は、恐る恐る飲んでいたらやっぱり熱かったです。そんな姿を見かねたお店の方が「一気にグイッといってみてください」と更なる後押し。
グラスの角度を上げると・・・なるほど! 口の中で、温かさと冷たさが中和され、じゃがいもと栗の甘さがブレンドされたのです。温冷の差をダイレクトに楽しめる1品でした。
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鶏のミンチとスッポンのエンペラーを包み込んだロール白菜。上にも希少なスッポンが載っています
もうこの時点で、すっかりトリコになってしまっていましたが、まだまだお料理は続き、カラフルな彩りの「鶏とスッポンのロール白菜」が目の前に。とろみの餡は、カキノキダケと銀杏で、スッポンのうまみとお醤油がベースで、濃厚のように見えて、やさしい甘さのお味です。
このゼラチンの甘さを感じられるようにと、おすすめしたくれたワインは、山梨・シャトー酒折ワイナリーの「マスカットベリーA樽熟成 キュヴェ・イケガワ」という赤。イチゴのような果実味あふれるワインでした。
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盛り付けはフレンチそのものですが、味付けはすべて和の調味料
お魚料理は「甘鯛のうろこ焼き」。うろこは、音がするほどパリパリッの食感で、白身はふっくら。シェフの高い技術を実感するおいしさでした。ソースは、柚子味噌と白だしが隠されており、付け合せは、ホウレンソウのお浸し。和でもなく洋でもない、けれど計算された日本人に合う1品は、ペロリと堪能してしまいました。
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贅沢に秋トリュフのスライスも載った但馬牛のフィレ肉
お肉料理は、フレンチのメイン料理らしい「但馬牛フィレ肉のロティ」。けれど、ここにも和のエッセンスがあり、目の前でかけてくれたソースは、八丁味噌とテンメンジャン、フォンドヴォーという変化球。お肉のやわらかさと、味噌のまろやかな甘さが包み込み、至福の味わいでした。
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つるんとかわいらしい、ほうじ茶の小さなデザート
お口直し的に出てきたのは、スプーンの上でぷるぷるした白い玉。つるんと口に入れると、ほうじ茶の味とぷちっとした食感が・・・。この正体は、実際に楽しんでもらいたいので秘密にしておきます。
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丹波栗のモンブラン。中にフォークを入れると隠れスイーツが
最後のデザートは、秋の王道スイーツ「丹波栗のモンブラン」。見た目はオーソドックスですが、中を割ると抹茶のアイスクリームが隠されていました。どこまで、サプライズを盛り込んでくれるメニューなのでしょう。
シェフの探究心こそ、サプライズ料理が生まれる
最初から最後まで、わくわくしっぱなしだったお料理。想像を超える組み合わせで、楽しませてくれた料理長の西薗さんにお話をうかがったところ・・・
「お店自体が和をコンセプトにしているので、食材はもちろん、調味料も和食で使うものを取り入れています。今日の料理も、サンマのタルト(アミューズで提供されたもの)以外は、醤油とお味噌を使用しているんです。だから、すっと食べやすくカロリーも抑えられています。
(料理は)同じメニューでも日々進化をさせていっています。お客さんに満足をしてもらいたいという思いで、より良くしていかないと飽きられちゃいますから。いかにサプライズを与えられるかを考えています」
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お客様の満足度のために日々メニューを昇華させる、と話してくれた料理長の西薗さん
シェフの向上心と探究心が、食のエンターテインメントに繋がっているんですね。
また、今回サービスをしてくれたソムリエの岸本さんには、ワインをオーダーする際にどのように伝えたらいいか質問すると・・・
「ワインの知識はなくても大丈夫。やさしめ、甘口が好きなど、簡単に好みを伝えてくだされば、その日のお料理や会話から探っておすすめをお出しします。ワインは、1+1=2ではなくて、3にも4にもなると思うんです。お料理とワインの可能性を最大限に引き出す努力をします」
と、教えてくれました。私もワインは好きですが、好みをうまく伝えられないひとり。今回はすべておまかせしましたが、素敵なマリアージュを堪能することができました。
上品でウィットに富んだ、日本の粋が集結する“ジャパニーズフレンチ”。これからの季節、家族やビジネスの大切な食事会や、恋人たちにとっての甘いクリスマスディナーに、ぜひ足を運んでみてください。
ゲストを喜ばせてくれる、あたたかいおもてなしがたくさん待っていますよ。
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■OZ限定プラン
ディナー9800円(税・サ込)~
※紹介したメニューはすべて一例です。予約の際はプラン内容をご確認ください
■今年の予約もまだ間に合う!クリスマスディナー
20000円(税・サ込) ※2016/12/22~25限定
---DATA---
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー53F
アクセス/京王新線「初台駅」より徒歩1分。東口改札よりエスカレーターを利用し、2階中央エレベーターホールへ進み、高層階専用エレベーターで53Fへ
営業時間/ディナー17:30~22:00(20:30LO)
日曜定休 ※不定休あり
席数/40席
WRITING/ASAMI TAYA(OZmall)