ビール初心者の女性でもハズさない!「基本のクラフトビール講座」
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第3次ブーム到来とも言われ、近年人気のクラフトビール。何となく味わってみたことはあるけれど、実はクラフトビールの種類まできちんと理解している人は少ないのでは? そこで、初心者の女性でも知っておきたい「基本のクラフトビール」をビアジャーナリストのコウゴアヤコさんがピックアップ。日常シーン別におすすめのビールも紹介しているから、気分に合わせてぴったりの1本を見つけて
更新日:2017/08/15
基本のクラフトビールの種類は全部で3スタイル
そもそもビールとは大麦麦芽、ホップ、水、酵母から造られる醸造酒のこと。その中でもクラフトビールは、独立した小規模醸造所で生産され、職人に丹精込めて造られる。長い歴史の中で地域の風土や気候などの影響を受けながら進化し続け、今では100種類以上にも及ぶけれど、発酵方法の違いで「エール」、「ラガー」、「自然発酵ビール」と基本の3スタイルに分類できる。さっそくそれぞれの特徴をチェックしてみよう。
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【style1】ラガー系
日本で流通しているビールの殆どがこの「ラガー系」だけれど、ビールの歴史からすれば実は新顔。発酵の最後に下面に沈む「下面発酵酵母」を使用し、10度前後の低温で発酵・貯蔵させたビール。黄金色で見た目にも美しい。すっきりとした味わいで、ゴクゴクと爽快なのど越しを楽しめる。
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【style2】エール系
「ラガー系」が誕生する19世紀までは、ビールと言えば「エール系」のことを指した。発酵の最後に上面に浮かんでくる上面発酵酵母を使用し、20度前後の常温に近い温度で発酵させて造る。フルーティで華やかな香り、豊かな味わいが特徴。歴史が長く、奥深いビールなので探求心の強い人はぜひ挑戦を。
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【style3】自然発酵系
培養管理されていない自然の酵母をビールに取り込み、発酵させたビール。強烈に酸っぱく、屋根裏部屋のような独特な香り。代表的な銘柄はベルギーのランビックなど。ランビックにフルーツを漬け込んだ「フルーツランビック」は甘酸っぱく、ビールの苦さが苦手な女性でも飲みやすい。
シーン別のおすすめも。コレだけは知っておきたいクラフトビール7選
代表的なビアスタイルが分かったところで、ビアジャーナリストのコウゴアヤコさんが初心者でも押さえておきたい7種のクラフトビールをレクチャー。それぞれのビールを飲むのにぴったりな日常のシチュエーションも紹介しているので、どれを飲めばいいか悩んでしまう人はぜひ参考にして。
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【お話を伺った方】コウゴ アヤコさん
1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして、雑誌やラジオ、WEBマガジンなど様々なメディアで活躍中。
【1】ピルスナー(ラガー系)
1842年にチェコのピルゼンで誕生したことから、「ピルゼンのビール(ピルスナー)」と名付けられた。大手ビール会社が販売しているビールはほとんどがこのスタイル。黄金色の液体と白く豊かな泡、爽快感のある苦みとすっきりとしたのど越しが特徴。
【商品例】
瑠璃-Ruri-(コエドブルワリー)、多摩の恵ピルスナー(石川酒造)、ピルスナー(箕面ビール)、ピルスナー(湘南ビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
口の中をスッキリとさせ、のどの渇きを癒すのに最適なビールなので、仕事帰りの1杯におすすめ。職場の仲間と楽しむのはもちろん、がんばった自分へのご褒美としてもどうぞ。
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【2】ペールエール(エール系)
黄金色~銅色で英国発祥のビール。麦芽のうまみが感じられ、フルーティで豊かな味わい。使うホップの種類によって刈草や柑橘類の香りと苦みが感じられる、ゆっくりと味わって飲みたいビール。
【商品例】
ペールエール(常陸野ネストビール)、よなよなエール(ヤッホーブルーイング)、多摩の恵ペールエール(石川酒造)、ペールエール(箕面ビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
香りを楽しむビールなので、ゆっくりと考え事をしたいときや、自分をリセットしたいときにぴったり。また、クラフトビールの中でもスタンダードなスタイルだから、これからビールを勉強したい人にも最適。
【3】IPA [アイピーエー](エール系)
IPAはインディア・ペールエールの略称。ペールエールを、英国の植民地であったインド(インディア)に船で輸送するために、腐敗防止作用のあるホップを大量にビールに投入して造られた。ホップの香りや苦みがしっかり感じられる。ちょっとツウ好みの味わい。
【商品例】
インドの青鬼(ヤッホーブルーイング)、志賀高原IPA(志賀高原ビール)、IPA(湘南ビール)、スルガベイインペリアルIPA(ベアードIPA)、IPA(プレストンエールブルワリー)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
華やかな香りと強い苦みでインパクトの強さはNO.1! ここ数年最もブームになったビールでもあり、特徴的でありながら初心者にも人気のビアスタイルなので、ぜひ一度チャレンジしてみて。
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【4】ヴァイツェン(エール系)
南ドイツで生まれたビール。大麦麦芽の他に、小麦麦芽を加えて造られる。色は黄色~茶褐色で白濁しており、豊かな泡が特徴。色が濃いものほどローストされた麦芽が使われているので、チョコレートのような香ばしさが増す。バナナやクローブのような香り。
【商品例】
小麦のビール(銀河高原ビール)、ヴァイツェン(富士桜高原麦酒)、白-Shiro-(コエドブルワリー)、ヴァイツェン(横浜ビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
甘く包みこむような味わいとフルーティな香りで、カラダが疲れたときにぴったり。苦みが少なく、ビールが苦手な人でも飲みやすい味わいだから、初心者にもおすすめ。
【5】ホワイトエール(エール系)
ベルギー発祥のビール。大麦麦芽に小麦を加えて造られる。液は黄色で白濁しているので「ホワイト」と呼ばれる。オレンジピールやコリアンダーシード(パクチーの種)が入っており、フルーティかつスパイシー。苦みは少なく爽やかな飲み心地。
【商品例】
黄桜 LUCKY CAT(黄桜)、水曜日のネコ(ヤッホーブルーイング)、ホワイトエール(常陸野ネストビール)、Snow Blanche(KONOSHIビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
ヴァイツェンと同様に苦みが少なく、より爽快感のある味わい。最初の1杯や気分をすっきりしたいときにおすすめ。白身魚やタイ料理などレモンを絞って食べるメニューと相性が抜群。
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【6】スタウト(エール系)
アイルランド発祥。色は黒く、ミディアム~フルボディ。ローストした麦芽による苦み、酸味が感じられ、ナッツやコーヒー、ビターチョコのような香ばしい風味。チョコレートやカップケーキ、バニラアイスなどのスイーツとの相性はバツグン。
【商品例】
スイートバニラスタウト(サンクトガーレン)、スタウト(箕面ビール)、スタウト(伊勢角屋麦酒)、松江ビアへるん縁結麦酒スタウト(島根ビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
麦芽をローストした風味が甘いものとよく合うので、食後の締めの1杯としてスイーツと一緒に味わうのもおすすめ。また、スタウト自体がチョコレートのような風味の為、デザート感覚で味わえる。
【7】フルーツビール(ラガー・エールどちらもあり)
その名の通り、ビールに果汁もしくはフルーツシロップを加えたビール。エールでもラガーでも、フルーツが加えられれば、フルーツビールと呼ばれ、幅が広い。加えられるフルーツの香りと甘みが全面に感じられる。
【商品例】
@湘南ゴールド(サンクトガーレン)、宮崎きんかんラガー(ひでじビール)、Tropicalpink(城端麦酒)、アップルホップ(南信州ビール)
◆このビールはこんなシーンにおすすめ!
りんごや桃など甘酸っぱいフルーツの味を堪能できて飲みやすいので、ビール嫌いな人にもぴったりのビアスタイル。ほかのビールとは少し変わった風味で、飲み疲れたあとの「ひと休み」にもおすすめ。
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【番外編】クラフトビールをもっと楽しむコツ
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◆その1◆料理とのおいしい組み合わせを探す
料理とビールを合わせるときは、まずビールが生まれた国の料理に合わせてみるのが基本。ソーセージにはヴァイツェン、フィッシュアンドチップスにはペールエール。これは同じ環境で育ってきた“幼なじみ”同士をくっつける方法。
次は、色で合わせてみよう。ビールの色は麦芽をローストしたときの色で決まる。濃色ビールはロースト香があるので色の濃い食べ物に合う。淡色のピルスナーなら、色の薄い塩味のもの。ペールエールやスタウトには甘辛さがよく合う。
上級編では、相関関係を考えてみる。苦いコーヒーに砂糖が合うように、スタウトにスイーツは相性がよい。白身魚や魚介類に柑橘類を絞るように、柑橘系の香りのホワイトエールは合う。これができればもうビール上級者。ビールも料理も相乗効果でよりおいしく感じられるはず。
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◆その2◆色の濃さでビールの温度を考える
ビールにもおいしく飲める温度があり、色が濃いものは薄いものよりも温度が高い方がより香りを楽しめる傾向にある。
アイスコーヒーよりもホットコーヒーのほうが香りを感じるのと同じで、温度が高いほうがより香りが立ち、ビール本来の豊かな香りを堪能できる。
喉越しを楽しむピルスナーであっても冷やし過ぎは禁物。ビールの成分が凝固し、泡持ちが悪くなることも。もし色の濃いビールがキンキンに冷えて提供されたら、手でグラスを温めたり、時間を置いたりして、味が変化していくのを楽しもう。
<おいしく飲める温度の目安>
ピルスナー:6~9度
ホワイトエール:6~10度
ヴァイツェン:10~12度
ペールエール、IPA:11~14度
スタウト:12~15度
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◆その3◆よいビアバーを見つけよう
コウゴさんの考える「よいビアバー」とは、ビールがおいしいだけでなく、料理がおいしく、雰囲気もいいお店だそう。
食材にこだわりを持ったお店やソフトドリンク・カクテル類もあるメニューの豊富なお店なら、ビールがそこまで得意でない場合や飲めない女友達とも気軽にチャレンジできる。
さらに、店員さんがフレンドリーで知識が豊富なら、おすすめのビールや今日入ったクラフトビールなどを聞いてみるとぐっと世界が広がるはず。百聞は一見に如かず。まずはお店に飛びこんでみよう。
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