白髪はなぜ生えるの?原因や対処法、予防法を徹底解説【美容皮膚科医監修】
自然な老化現象として避けては通れない“白髪”。30代頃から出現し始めて、たった数本生えているだけでぐっと老けた印象に見られてしまう。そんな白髪に悩む人へ、美容皮膚科「サマンサクリニック」の貞政裕子先生に聞いた白髪の原因やケア方法をご紹介。
更新日:2020/12/10
白髪とは?
白髪の状態・できる仕組み
髪は、毛細血管から髪の原料となる栄養分を毛乳頭で取り込み、その栄養分が供給された毛母細胞によって作られている。髪の色は毛球部にあるメラノサイト(色素細胞)で生成されるメラニン色素の量によって決められており、黒髪はメラニン色素が多く、白髪はメラニン色素がほとんどない状態。
毛母細胞で作られた直後の髪はもともと白く、髪の根もとで成長する過程でメラニン色素を取り込み、色がついた髪が生える仕組みとなっている。ところがなんらかの原因でメラノサイトが機能しなくなると、メラニン色素が作られず白髪に。また、メラニン色素の原料となるアミノ酸の一種“チロシン”の不足も白髪に繋がる。
白髪の原因
■ストレス
ストレスは白髪の原因のひとつ。大きなストレスが加わると交感神経系が過剰に活性化され、神経伝達物質として働くノルアドレナリンが大量に放出。すると、色素幹細胞が過度に活性化され、急速に枯渇し白髪となる。
■栄養不足
白髪が生えにくい健やかな髪の成長には、栄養をしっかり摂ることが大切。最近では加工食品の普及によって十分な栄養を確保できなかったり、ダイエットによって栄養の偏りがあったりと、“隠れ栄養失調”の人が増えている。
■遺伝
白髪は遺伝的要素も大きい。早老症と言われるいくつかの病気では、遺伝子の異常によってメラノサイトを生み出す色素幹細胞が早く枯渇するため、早くから白髪になってしまう。
■加齢
老化は白髪の最大の原因。メラノサイトは色素幹細胞によって生み出されるが、加齢によって色素幹細胞が枯渇していくと、メラノサイトの働きが低下し、メラニン色素を作れなくなって白髪になっていく。
■紫外線
紫外線によって頭皮で活性酸素が発生し、メラニン色素を作りだすメラノサイトを老化させたり、細胞内のDNAを損傷させてしまう可能性も。紫外線の種類にUV-A、UV-B、UV-Cがあり、皮膚の真皮層まで浸透するUV-Aは白髪を増やす原因に。アウトドアの際は帽子を被って紫外線から頭皮を守ろう。
■睡眠不足
睡眠中に活発に分泌される成長ホルモンは細胞の死滅と分裂のバランスを保つ大切な要素。睡眠不足は成長ホルモンの分泌が低下し、バランスが崩れて細胞の死滅が増加。メラノサイトによる髪への色素補給が追いつかなくなり、白髪となる。
白髪の対処法
ヘアサロンでグレイカラー(白髪染め)をする
ファッションカラーは、鮮やかなカラーが楽しめるようにブラウンが少なく配合されているため、白髪を染めるには不向きのヘアカラー。対して白髪染めは白髪を染めるためにブラウンが多く配合されたヘアカラーで、薬剤のパワーが強く、髪と頭皮のダメージは強いが、一度のカラーリングで白髪をしっかり染めることができ、色持ちが良いことがポイント。最近では、白髪を活かしたグレイヘアが注目を集めており、グレイカラーで全体を明るく染めたり、ハイライトを入れて白髪をなじませることで、大人おしゃれな仕上がりに。
グレイカラーがおすすめのヘアサロン
ヘアサロンでイルミナカラーをする
白髪をカバーしつつ、クリアな発色やダメージを抑えたツヤ髪をめざしたい人におすすめなのが、イルミナカラー。髪への負担が少なく、ツヤと透明感が出るイルミナカラーは、白髪をなじませながらおしゃれな仕上がりに。グレイカラーと比べると退色を早く感じやすいが、退色の仕方は自然なので色落ちも楽しめる。柔らかく淡い色味を出すのが得意で、明るめの印象に染めたい人にもおすすめ。
イルミナカラーがおすすめのヘアサロン
自宅でセルフカラーをする
白髪を染めたいけど、サロンに行くのは面倒。そんな人は、自宅でヘアカラーをするという選択も。現在は、ドラッグストアやネットショッピングで手軽にカラー剤を購入することができ、カラー剤の種類もさまざま。白髪をしっかりカバーしたい、ダメージを抑えたいなど目的に合ったものをチョイスして。
【セルフカラーの仕方】
1、くしで髪をとかす
2、ゴムやダッカールで髪をブロッキングする。耳前右、耳前左、後頭部上、後頭部下の4つに分けよう
3、フェイスライン、耳周り、首に保護クリームを塗る
4、後頭部下、後頭部上、耳前のブロックの順に髪の根もとにカラー剤を塗る。根もと全体に塗り終えたら、先ほどのブロックの順に髪の毛先までカラー剤を染布
5、キッチンラップを頭を覆うように巻いて、説明書に記載してある時間通りに放置する
6、キッチンラップを外してシャンプーでカラー剤をしっかり落とす。トリートメントなどアフターケアも忘れずに
自宅で白髪染めシャンプー、トリートメントをする
髪のダメージが気になる人や、白髪を自然にカバーしたい人は、手頃な価格で手に入って扱いやすい白髪染めシャンプーやトリートメントがおすすめ。カラー剤のように一度染めれば数日持つというものではなく、毎日使って徐々に染めていき、カラーの退色具合に合わせて使うことができる。染毛力は強くないため、白髪をしっかり染めたいという人はカラー剤を選択しよう。
白髪の予防法
ストレスの解消
大きなストレスが加わると交感神経系が過剰に活性化され、神経伝達物質として働くノルアドレナリンが大量に放出。すると、色素幹細胞が過度に活性化され、急速に枯渇し白髪となってしまう。自分にぴったりなストレス解消法を見つけて、ストレスフリーな生活を送ろう。
食生活の改善
1日3食、栄養バランスの良い食事を心がけることも大切。髪に良いとされる栄養素も積極的に摂取しよう。
■亜鉛
髪の毛の原料となるタンパク質の合成に必要
多く含まれる食品:牡蠣、レバー、高野豆腐など
■ビオチン
皮膚や粘膜の新陳代謝を改善し、頭皮の健康状態を維持する
多く含まれる食品:レバー、卵黄、玄米、キノコ類、豆類、貝類など
■パントテン酸
糖質や脂質、タンパク質の代謝とエネルギー酸性に不可欠な酵素を補助する
多く含まれる食品:卵、牛乳、レバー、納豆、きな粉、ピーナッツ、干し椎茸、鮭、鰯など
■L-シスチン
髪を構成するタンパク質の主要なアミノ酸
多く含まれる食品:牛肉、羊肉、牛乳、鮭、オートミール、小麦粉など
■ビタミンE
血流を良くする
多く含まれる食品:ウナギ、アーモンド、アボカドなど
早寝早起きをする
朝は太陽の光を浴び、夜は早く寝るというのも白髪予防に効果的。睡眠ホルモンである“メラトニン”は朝目覚めて光を目に受けて14~16時間後に分泌される。髪の毛のダメージを修復したり、新陳代謝の正常化を促す成長ホルモンは夜の深い睡眠となった頃に多く分泌されるが、この分泌量は“メラトニン”による影響が大きい。朝しっかり光を浴びなかったり、深夜まで起きていると成長ホルモンの分泌が少なくなってしまうので早めの就寝を心がけて。
頭皮マッサージをする
白髪を増やさないためには、頭皮環境の保持を徹底することが大事。一番簡単な方法は頭皮マッサージ。特に頭皮の硬い部分は指でよく揉みほぐし、血流の良い状態を保ってあげるだけでも、頭皮に栄養が巡りやすくなり、白髪予防に効果的。
【頭皮マッサージの仕方】
1、首を大きくゆっくり動かして首のリンパの流れを良くする。肩も大きく前から後ろ、後ろから前へ動かして
2、指の腹で生え際から頭頂部にかけてゆっくりと引き上げて2~3秒キープ。5回ほど繰り返す
3、指の腹を耳の上あたりに置いて、円を描くようにもみほぐす
4、左右から頭を包みこむように両手の指の腹を置いて、頭頂部にかけてゆっくり引き上げて2~3秒キープ。5回ほど繰り返す
5、頭全体を指先で軽くトントンとタップする
白髪予防のヘアケアアイテムを使う
白髪予防に良いとされる成分は、メラニンの生成を活性化する作用がある「ヘマチン」や、髪の毛根部にあるメラノサイトを増加させメラニンの合成を促す「メリタン」、髪の成長期を伸ばす作用がある「アデノシン」、血行の促進や細胞分裂の活性化作用がある「センブリエキス」などさまざまある。成分表を確認して、自分にぴったりのヘアケアアイテムを習慣的に使おう。
クリニックでケアする
クリニックでは、白髪にも効果が期待されている「育毛用ペプチドの注射(ヘアフィラー)」や、頭皮の血流を良くしたり、毛乳頭や細胞の活性化を図る「医療用LED照射」など、白髪ケアに効果的な施術がたくさん。医師の診断のもと、自分にあった治療を取り入れよう。
白髪のQ&A
白髪が黒髪に戻ることはありますか?
完全に戻ることはありませんが、食生活や睡眠、ストレスなど生活習慣を整えることで改善することは期待できます。しかし老化を止めることはできないので、緩やかに進行していきます。
白髪を抜くと増えるのは本当ですか?
抜いたことが原因で増えることはありませんが、抜くことで毛根が痛み、再生した白髪が波状にうねるなど変形してしまい、黒髪の中で目立つようになることは多いです。頻繁に抜き続けていると薄毛に繋がるので注意が必要です。
根もとが黒い白髪がありますが、これはなぜですか?
髪は、なんらかの原因でメラノサイトが枯渇したり、機能が低下するとメラニン色素が生成されず、白髪となって生えるのですが、機能の低下であれば、低下の原因となるものを改善すればメラニン色素が再出現し、途中から黒髪に戻って生えることがあります。
生え際やこめかみなど、一部分に白髪が集中して生える理由を教えてください
白髪はまず側頭部に出現し、次第に頭頂部、ほかの頭部、さらに髭、陰毛、腋毛などに拡大します。なかでも生え際や、特にこめかみ部分には神経細胞が通っており、長時間のパソコン作業やストレスなどで神経細胞が活発になると、活性酸素が発生し白髪となるため、白髪が生えやすい箇所と言えます。
若白髪と白髪の違いはなんですか?
髪の状態は同じですが、原因が異なります。若白髪は遺伝やストレス、栄養不足、睡眠不足などが原因となりますが、白髪は老化による現象。ストレスや生活習慣の乱れなども関係して、白髪が生え始める年齢や増えるスピードが変わってきます。
■若白髪について詳しく見る
教えてくれたのは「サマンサクリニック」貞政裕子先生
サマンサクリニック院長。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。大学病院での長年の勤務の後、有名美容皮膚科クリニックにて勤務。サマンサクリニックでは、練馬高野台、富士見台など地域に密着した「お肌のかかりつけ医」として、親身でやさしい診療を行う。
WRITING/KANO NUMATA