京都観光特集

京都・相国寺の特別公開へ。日本最古の法堂に響く“鳴き龍”と、女性にまつわる仏教美術に出逢う/京都ノ彩リ、出逢ウ巡ル。

更新日:2023/05/16

二十四節気×色をテーマに、京都在住の広報・PRとして活躍する西井さんが紹介する「京都ノ彩リ、出逢ウ巡ル。」。生い茂った草木が天地に満ちていく「小満(しょうまん)」のころ。青々しい美しさの裏方丈庭園をはじめ、日本最古の法堂など、いつもは一般公開されていない相国寺が特別に公開されます。

歴代足利将軍と深い繋がりのある寺院で、古の建築美が叶える特別な“音”と“仏教美術”に出逢ってきました。

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京都“小満”ノ彩リ、出逢ウ巡ル。/相国寺

写真提供:相国寺

相国寺とは、その歴史は?

今回訪れたのは、京都五山として知られ通常非公開である相国寺です。14世紀後半、室町幕府第3代将軍 足利義満(よしみつ)によって創建された臨済宗相国寺派の大本山。漢詩に優れた禅僧を多く輩出し、中世文化形成に重要な役割を果たしたとされる“五山文学”の中心地であったともされています。

創建当時は、京都市内の南側に位置する室町一条あたりに総門があり、約144万坪もの寺院敷地があったそう。いく度も焼失と再建を繰り返しており、応仁の乱(1467年)や天文の乱(1549年)で火災に巻き込まれ消失するも、多くの歴史上の人物の助けによって再建されてきました。

火災の影響で創建当時のものは少ないそうですが、現在の方丈や庫裡、開山堂や勅使門などの、相国寺にある多数の仏教建築は、京都府指定有形文化財となっています。

写真提供:相国寺

日本最古の法堂(はっとう)建築とご本尊

日本最古の法堂建築として重要文化財に指定されている法堂は、慶長10年(1605年)徳川家康の命を受けた、豊臣秀吉の三男である秀頼(ひでより)の寄進によって再建されました。

おそれることなく法を説くお堂として“無畏堂(むいどう)”と称され、法堂の南側にあった仏殿なきあとは、仏殿も兼ねています。堂内の中心には三方に高い階段を備えた須弥壇(しゅみだん)があり、鎌倉時代の仏師である運慶(うんけい)作と伝わる、ご本尊・釈迦如来(しゃかにょらい)、脇持には向かって左に阿難尊者(あなんそんじゃ)、右に迦葉尊者(かしょうそんじゃ)の像が祀られます。

写真提供:相国寺

どこからでも目が合う龍の迫力は圧巻

そのようなご本尊を見守るかのように、天井には狩野派の代表的な絵師である狩野永徳の長年である光信(みつのぶ)の筆による、「蟠龍図(ばんりゅうず)」が描かれています。

龍は仏法の守護神(空想上の瑞獣)として禅宗の法堂にはよく描かれているそう。この“蟠龍”とは、とぐろを巻いて龍が天に登っている姿をあらわし、さらに堂内のどこからでも龍と目が合うような“八方にらみ”が特徴です。

またこの蟠龍が描かれた天井は“むくり”と呼ばれる技法によって中央が少し上に向かって盛りがっていることから、堂内のある場所で手を叩くと、音が反響し音が返ってくるのです。まるで龍が鳴いているように聞こえることから“鳴き龍”と称されてます。

ぜひ堂内を拝観する際には、ある場所に立って龍に向かって手を叩いてみてください。

写真提供:相国寺

圧倒的な建築美の方丈と、流麗な裏方丈庭園

現在の方丈は、天明の大火を経て文化四年(1807)に開山堂、庫裏とともに再建されたもの。造りは一重、入り母屋造り、桟瓦葺き、切妻造りとなっており、その建築美に圧倒されます。

また青もみじや若松葉の青々しさが美しい裏方丈庭園も、魅力にあふれています。前庭は白砂を敷き詰めた一見シンプルな造りなのですが、この白砂によって太陽光を室内を取り入れる効果があるのだそう。水の柔らかな動き、けわしい渓谷を表現するなど、当時の日本においては最先端の造園技術が使われ、現在までこの風景が守られてきました。

僧侶の方も「ここの景色が好きです」とお話されるほど、心地よい風が抜ける庭園で、旅のひとときを過ごすことも良いかもしれませんね。

相国寺の2023年春の特別公開は6月4日(日)までとなるので、ぜひ普段見ることが出来ない、古刹の境内をお楽しみください。

相国寺

春の特別拝観/2023年3月24日(金)~6月4日(日)10:00~16:30 [16:00 最終受付]
拝観料/一般・大学生 800円 65歳以上・中高生 700円 小学生 400円
住所/京都府京都市上京区今出川通烏丸東入
アクセス/地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩8分

写真提供:相国寺

「女性と仏教」をテーマにした美術展も訪れて

相国寺の境内には、伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯など多くの優れた文化財を収蔵している承天閣美術館があります。

こちらでは無外如大(むがいにょだい)尼生誕八百年記念として「女性と仏教」をテーマとした「禅寺に伝わるものがたりⅡ期」の企画展が、2023年5月28日(日)~7月16日(日)まで開催されます。

無外如大は女性で初めて、臨済宗に強い影響を与えたとされる無学祖元(仏光国師)の法を継いだ尼僧とされています。歴史的には後世の尼僧たちに多大な影響を与えましたが、未だ調査研究を進めなければ判明されていない謎もおおく、その生涯はどのようなものだったのか大変興味深い人物です。

企画展では、無外如大によって創庵された庵に起源のある眞如寺で保護されてきた資料、寺宝に描かれた女性たち、皇女たちの描いた絵画や墨蹟など、これまで一般には公開されてこなかったものが展示されるそう。今回の展覧会をきっかけに、魅力あふれる仏教美術の世界にも触れてみてはいかがでしょうか。

禅寺に伝わるものがたりⅡ期 女性と仏教

会場/相国寺承天閣美術館
住所/京都府京都市上京区今出川通烏丸東入
会期/2023年5月28日(日)~7月16日(日)
休館日/2023年5月8日(月)~5月27日(土)
時間/10:00~17:00 (入館は16:30まで)
拝観料/一般800円、65歳以上・大学生600円、中高生300円、小学生200円
※一般の方に限り、20名様以上は団体割引で各700円
アクセス/地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩8分

相国寺の“よりみち”スポット/出町ろろろ

出町ろろろ

古き良き商店街にかまえる和食店、出町ろろろ。

相国寺での特別公開や仏教美術に満たされた後は、なんだか気分も、禅に習う気持ちで京野菜を食べたくなったので、今回は出町枡形商店街まで足を伸ばしてみました。東西に伸びる、昔ながら風情が残る商店街を歩んでいくと、あじのある看板が目印のご飯屋さん“出町ろろろ”に出逢います。

築100年の古民家を改装して作られた店内は、笑顔がたえない主人と気兼ねなく話すことができる距離感のカウンターと、自然な凹凸感に安心させられる漆喰が特徴。ご主人の田中さんと奥様の2人で漆喰壁を塗り上げたとか。

ふと店名の由来が気になり聞いてみると、「音で覚えやすいからかな。」と。たしかに“ろろろ”となんだか口ずさみたくなるような楽しい音で、愛着が湧いてきます。

京都 大原産の野菜をつかった、絶品 8種のおばんざいにほっこり

“いろんなものをちょっとずづ“味わうことが出来る、昼限定の「ろろろ弁当」1400円。京都 大原産の野菜をつかった8種のおばんざいは、野菜本来の風味を活かした一品ばかりで、どれも美しさと可愛らしさを感じます。

1段目のおばんざいは季節や畑で採れるもので変わることもあるそうですが、今回いただいたのは香りが良い胡麻豆腐を揚げたものや、柔らかな甘みがほろけるにんじんの炊きものなど、どれも野菜中心でありながら、様々な味の表現が生まれ、この8品だけでも満足感がありました。

また2段目の土鍋炊きのご飯や汁物、メインとなる“かきあげ”と“だし巻き”に食欲を掻き立てられます。野菜かきあげのサクサクほくほく感と、あんがトロっとかかっただし巻きは、口に入れるとまさに笑みが溢れてきます。

おこげがついてくるご飯に歓喜しつつ、最後はお味噌汁で。感動するほどの"ろろろ弁当"と笑顔が素敵なご主人にぜひ出逢ってみてください。

出町ろろろ

住所/京都府京都市上京区一真町67−1
営業時間/【火・水・木】11:30~ 売り切れ次第終了
【金・土・日】11:30〜13:30(L.O) 18:00〜20:30(L.O)

※お席については、事前にお電話にて確認されますようお願いします。
※ランチの”ミニ懐石”については、要事前予約となります。

定休日/公式インスタグラムを要確認
アクセス/京阪電車 出町柳駅より徒歩15分

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連載「京都ノ彩リ、出逢ウ巡ル。」

京都を中⼼に広報・PRマーケターとして活躍する⻄井将哉さんが、⼆⼗四節気×⾊をテーマに神社仏閣や建築物など、京都のシンボルスポットを紹介する連載「京都ノ彩リ、出逢ウ巡ル。」。

古都京都は四季によって豊かな表情を持ち、その季節でしか楽しむことの出来ない景⾊や美⾷が盛り沢⼭。地域に根付いてきた歴史を感じながら、周辺をゆっくりお散歩してみませんか?

教えてくれたのは「西井将哉さん」

⻄井 将哉
TANK Inc. General Manager / PR ・ Creative Evangelist

⽴命館⼤学法学部を卒業後、⼤⼿ウエディング企業において、神社仏閣での伝統的婚礼プロデュースや、拝観促進の新規事業開発を担う。2019年、京都にある格式高い寺院での史上初となる、婚礼分野の事業企画•演出を成功させる。

その後、法曹業界での経営企画・広報を経てTANK Inc.にジョイン「伝統⽂化をより⾝近に。」を⼈⽣のテーマして、京都市京セラ美術館での商業的利⽤の環境整備や、歴史的建造物に関わるプロジェクト推進など、ユニークベニュー開発・利⽤促進の専⾨家として、多数の⾏政案件に携わる。

また母校における京都校友会常任幹事として、起業家と学生の"知の交流"が出来る機会を創出。得意とする新規事業立案やPRコンサルティングなどの専門分野を越えて、多方面に活躍の場を拡げ続ける。

【 Instagram 】Masaya Nishii
https://www.instagram.com/msn_ni3/

【TANK.Inc HP】広報とPRのご相談
info@tankpr.jp
https://www.tankpr.jp/service.html

※記事は2023年5月16日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります