現代の暮らしを映す“用の美”に触れる。徳島県・徳島市「藍ハンカチ」_わたしの町の民藝ちゃん【連載】

更新日:2021/02/20

メトロミニッツで連載中の「わたしの町の民藝ちゃん」は、ローカルに暮らすあの人が教えてくれる、町で生まれた手仕事もの(=民藝ちゃん)の話。第2回目は徳島県・徳島市の「藍ハンカチ」を紹介。徳島市在住のフードデザイナー・小林幸さんが、民藝ちゃんにまつわるローカルの物語をお届けします。

ごくシンプルな藍染のハンカチの奥にあること

徳島には藍の歴史がある。藍は昔から染め物や薬に使われ、現代ではスーパーフードとしても注目されている。そんな藍を、私は自分の暮らしに取り入れることはなかった。

ある日、気の利いたいつもの雑貨店に立ち寄ると、壁に飾ってある布が目に入った。それは仕立てのよいスカーフのような藍染のハンカチ。いい意味で飾り気や素朴さがかき消され、洗練されている。店主が教えてくれた作り手の染め師に、藍染の魅力を尋ねた。 「液の管理は、どうしてこうも難しいのかと思うこともあります。昨日はよく染まったのに、今日はイマイチだな、とか。でも濃く染まるときの色、浅くしか染まらないときの色、どちらも大切で。色を素材に『とめる』ことは、私の記憶や感情も残せている気がして、不思議な気持ちになることもあります」

シンプルなハンカチは老若男女問わず持つことができるし、弁当箱などを包んでもいい。ドットの部分だけ染め抜いた水玉も粋だ。染めの工程で生じる「藍の華」を表しているドットには、よく見ると三ツ星がある。私は星座を見つけたときのような小さな喜びを得て、彼女の遊び心に共鳴できた気がした。これは、かの時代の美というより、私たちの今の暮らしを映したコンテンポラリーな用の美。藍染のハンカチがそんな風に思わせてくれた。

民藝ちゃんDATA

■教えてくれた人/小林幸さん
東京都出身、徳島県在住のフードデザイナー。YUKI FOOD DESIGN STUDIO主宰。食にまつわるビジュアルデザインとオリジナルおやつブランド「おやつの花」を営む

■作った人/三木真由美さん
徳島市出身。四国大学入学後、藍染に出会い、天然灰汁発酵建ての技法を学ぶ

■買えるところ/cue!
TEL.088-622-4465
住所/徳島県徳島市昭和町7-1-2
営業時間/11:00~19:00
定休日/水

PHOTO/KAZUHITO MIURA TEXT/YUKI KOBAYASHI
※メトロミニッツ2021年3月号「わたしの町の民藝ちゃん」より転載

※記事は2021年2月20日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります