日本美術とファン・ゴッホ。互いに憧れ続けた関係を作品や資料でたどる「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」

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浮世絵をはじめとする日本美術に大きな影響を受けたオランダの画家、ファン・ゴッホ。彼は、日本からどんな影響を受け、どんなイメージを描いたのか? そのことを検証するために、オランダと日本の監修者・学芸員が協力して国内外から厳選した作品を展示する、日本初の国際共同プロジェクトとなる展覧会が開催されるそう。日本に憧れ続けたファン・ゴッホと、その作品を愛した日本人の夢の軌跡を体感して。

更新日:2017/07/31

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第一部では日本美術から影響を受けたファン・ゴッホの作品と浮世絵など日本美術の作品を展示

2017年10月24日(火)から2018年1月8日(月・祝)まで、上野の東京都美術館では、展覧会「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」を開催する。会場は2部構成で、第1部は「ファン・ゴッホのジャポニスム」と題してファン・ゴッホの作品約40点を、第2部は「日本人のファン・ゴッホ巡礼」として近代の日本人がゴッホゆかりの地を巡礼したことを示す約70点の資料を展示。全体を見ることで、その関係が双方向から分かるようになっている。

花魁2点

左:溪斎英泉《雲龍打掛の花魁》1820~1830年代、千葉市美術館蔵 東京展後期展示、他の会期では個人蔵作品を展示
右:フィンセント・ファン・ゴッホ《花魁(溪斎英泉による)》1887年、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵(C)Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

写真は、第1部に展示されるファン・ゴッホの作品「《花魁》(溪斎英泉による)」で、この絵の元になった溪斎英泉(けいさい えいせん)の《雲龍打掛(うんりゅううちかけ)の花魁》を見れば、「なるほど」と納得できるはず。

オランダで生まれ育ったファン・ゴッホは、1886年にパリで浮世絵と出会い、その鮮やかな色彩や表現に魅せられたという。この作品には、花魁のほかに、別の浮世絵からモチーフをとったカエルや鶴も描かれていて、彼がいかに多くの浮世絵を見ていたかが分かる。こうした、浮世絵などを含む日本美術の作品も約50点が展示されるので、モチーフを見比べるのも楽しい。

5.カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ

フィンセント・ファン・ゴッホ《カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ》1887年、ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)蔵(C)Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

また、一見すると日本美術とは無関係にも見える作品の中に、よく見るとその影響がうかがえる作品も。写真の作品《カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ》では、右上の奥のほうに青い着物姿の女性が見える。

南仏アルルで“日本の面影”を感じて描いた日本初公開の作品も

1888年にパリを離れて南フランスのアルル地方に旅立ったファン・ゴッホは、アルルに向かう列車の中で「日本にもう着くか、もう着くか」と胸を躍らせていたという。彼の中では、アルルが「日本そのもの」に思えたらしく、初日に降った雪を見て「まるでもう日本人の画家たちが描いた冬景色のようだった」と手紙にも書いているほど。写真の作品は、まさにその雪景色を描いたもので、こちらは日本初公開。

アルル「雪景色」

フィンセント・ファン・ゴッホ《雪景色》1888年、個人蔵

第2部では、没後にゆかりの地を訪れた文化人たちの名が残る「芳名帳」も日本初公開

第2部「日本人のファン・ゴッホ巡礼」では、アルルから移り住んだ、パリの北にあるオーヴェールが舞台に。ここは、精神を病んで1890年の7月に自ら命を絶ったと言われるファン・ゴッホの墓地がある場所。

画家の死から間もなく、日本では小説家の武者小路実篤や画家の岸田劉生など、近代を代表する文学者や美術家がその作品を熱心に紹介するようになったそう。そのため、大正から昭和初期にかけては、多くの日本人がファン・ゴッホの人生の軌跡を求めてオーヴェールへと向かったという。


芳名録Ⅰ

上/『芳名録Ⅰ:初編』表紙 1922年3月9日~12月17日署名分、ギメ東洋美術館蔵
Photo (C)RMN-Grand Palais (musée Guimet, Paris) / Thierry Ollivier / distributed by AMF-DNPartcom

オーヴェールで彼の最期を看取った医師・ガシェの家には、作品が保管されていたことから訪問者が多く、当時の日本人来訪者の名前を記した「芳名帳」(写真)が、今回、日本初公開となるのもみどころのひとつ。ここには、パリで活躍した画家の佐伯祐三、歌人の斎藤茂吉などの名前もあり、そうそうたる文化人たちがファン・ゴッホ巡礼を行ったことが分かる。日本に憧れながら訪れることの叶わなかった画家の絵は、やがて日本人たちの夢となって彼らを引き寄せたのかもしれない。

ゴッホの墓

前田寛治《ゴッホの墓》1923年、個人蔵(鳥取県立博物館寄託)

また、オーヴェールの墓地には、彼をずっと物心両面で支え続けた弟・テオの墓も並んでいて、その様子を描いた洋画家・前田寛治の《ゴッホの墓》などの作品も展示。このほか、日本画家の橋本関雪がガシェ家を訪問した際の貴重な映像も公開される。

日本美術とファン・ゴッホの関係性にスポットを当て、これまで知られなかった貴重な資料とともに紹介する展覧会。改めて、日本を愛した画家に親近感を覚えるのでは?

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ゴッホ展 巡りゆく日本の夢

東京都美術館

TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル)
東京都台東区上野公園8−36 東京都美術館
アクセス:JR「上野駅」公園口より徒歩7分 、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野駅」7番出口より徒歩10分 、京成電鉄「京成上野駅」より徒歩10分

会期:2017年10月24日(火)~2018年1月8日(月・祝)
開室時間:9:30~17:30 (入室は閉室の30分前まで)
※金曜日、11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は20:00まで
休室日:月曜日、12月31日(日)、1月1日(月・祝)
※ただし、1月8日(月・祝)は開室
観覧料(前売):一般1600円(1300円)、大学生・専門学校生1300円(1100円)、高校生800円(600円)、65歳以上1000円(800円)

NAOKO YOSHIDA (はちどり)

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※記事は2017年7月31日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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