オズマガジン古川編集長の「F太郎通信2017」Vol.01 2009年1月12日発売2月号「横浜」特集

更新日:2017/03/26

編集長になって初めてのオズ。思い出深い号です

オズマガジンのバックナンバーを少し楽しく読むためのコラム

 今から20年近く前、オズモールがまだ会員3万人(現在は約260万人)に満たないときのメールマガジンの中に「F太郎(販売部)通信」というコラムがありました。それは入社2年目の販売部の書店営業だったF太郎が、週に1回担当したコラムでした。
 当初そのコラムは、販売部がオズマガジンの販促をするために用意されたものでした。しかし週を追うごとにその文章は販促という唯一にして最大の使命を忘れ、ただの日記のようなものになっていきました。
 公園に住みついている猫の話、井の頭動物園から聞こえる象の花子の鳴き声の話、姉の結婚の話(←文字にして書くとひどいですね)・・・。インターネットがまだ小さな村のような時代だった頃の話です。

 でもそのコラムは、回を追うごとにユーザーからの返信が増えていくことになります。毎週ただ雑誌の宣伝をしていたときはなんのレスポンスもなかった記事が、読む人の役に立たない関係のないことを書き始めたとたんに、次号を待ってくれる人が増えました。
 僕はあのときにいただいた返事のことをよくおぼえているし、今でも時々思い出します。そして文章を書くことやモノを作ることを仕事にすることができた今も、あの体験がずっと心の中に原点として残っています。もしいま、この記事を読んでいる方で、F太郎通信のことをおぼえている方がいたら、どんなに素敵なことでしょうか? 

 ご無沙汰しています。F太郎こと、オズマガジン編集長の古川です。

 1998年に入社し、2002年にオズマガジン編集部に配属になってからずっとずっとオズマガジンを作り続けています。いつも読んでいただき、ありがとうございます。あのとき目標だった編集者になり、文章を書く仕事ができるようになりました。きっかけは間違いなくあのときのF太郎通信というコラムでした。

 今日から始めて6回、毎週日曜日にこのコラムを書かせていただきます。現代のインターネットの記事としては長くて常識外だと思いますが、もし読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。
 
 このページは、今まさに限定で公開している、オズマガジン過去8年のバックナンバーが読み放題というキャンペーンの宣伝の一環で書かせていただいています。8年前というのは僕が編集長になったタイミングですので、今日から6回、8年間約100冊の中の6冊を、思い出の号として紹介したいと思います。

 最初の1回は、2009年の1月に発売になった「横浜」特集。ちょうど今出ている横浜特集の原点になるような特集でした。僕が編集長として初めて作った本がこの横浜特集です。

 当時は「mixi」や「ブログ」など、個人の情報発信が全盛の時代で、あらためて雑誌の役割はなんだろうということを突きつけられているような時代でした。実際このころから、当時隆盛を誇っていた多くのライバル誌が廃刊に追い込まれていきました。本格的に情報がタダになったのです。

 横浜の情報をふつうに掲載しても、それはもう雑誌で得る情報としては弱くなっていました。そこで僕は、当時の編集部のメンバーみんなと一緒に必死に考えました。そこでいきついた言葉が「日常をていねいに」という、オズマガジンが今でも掲げている価値観でした。

 自分の毎日の中で、自分が選ぶものに意識的であってほしい。情報過多だからこそ、そういう考え方を大切にしていきたい。そう思って「情報の向こうに存在する物語の気配に耳を澄ますこと」を合言葉にしました。それこそが新しいオズマガジンだからできる情報発信の仕方なんじゃないか。

 横浜の町にある情報を集めながら、その情報を生み出している人がどんな思いでモノを作っているのか? 歴史を引き継いできたのか? そういうことを表現するにはどうしたらいいのか? 試行錯誤が始まりました。確信があったわけではもちろんありません。でも自分たちが自分たちを信じていなかったら、そんな雑誌を売るわけにはいきません。
 写真の撮り方ひとつ、キャッチの言葉遣いひとつ。今まで以上にこだわり抜く日々が始まりました。

 新しい価値観のもと、だんだん「横浜特集」ができあがっていきました。それでも、慣れない僕らが作ると、どうしても「情報」が前に出てしまう。そこで僕らはもういちど立ち止まって考えました。この雑誌を構成する要素の中でいちばん物語性があるものはなんだろう? 

 たどり着いた答え(僕たちなりの)は「川島小鳥さんの写真」でした。

 川島小鳥さんは、もう10年オズマガジンの表紙を撮り続けてくれています。当時はまだ20代だった小鳥さんに「小鳥さん、ひとりで横浜に行って小鳥さんが物語を感じた写真を撮ってきてください。どんなページができるかわからないけど、4ページあけておきます」そう頼みました。いま思えば難しい発注です。でも僕らにないものを小鳥さんが埋めてくれる。そう思ったんです。

 小鳥さんの撮ってきてくれた写真は、ある洋館の窓枠のアップでした。情報誌の写真としては、なんの情報にもなっていないし、全く役に立たない写真です。でもその写真は本当にいい写真だった。
 こちらも今となってはもう10年以上一緒に作っているアートディレクターは、その写真をトリミングせずに、1Pでデザインしてきました。今までのオズマガジンにはあり得ない大胆な構図でした。でもその役に立たない4ページが加わったことによって、この新しいオズマガジンの「横浜特集」は完成したように思います。

 気づけばもう8年以上も前の話です。

 最初に書いたように、いまオズマガジンのバックナンバーがすべて読み放題です。この横浜の号も、ぜひご覧になってみてください。雑誌というのは時代を映す鏡のようなものですから、年代によって雑誌のデザインやテンションは少しずつ変化していきます。でも本質的な部分でのオズマガジンの世界観は、あの日から変わっていないことが見てとれると思います。

 今年、オズマガジンは30周年を迎えます。30というのは、数字で書くとただの数字です。でもそこには、毎号毎号の具体的な編集作業や、具体的な喜びや葛藤が詰まっています。僕らにその説明をする権利はありません。雑誌というのは本来そういうものです。

 でもこのコラムで、せっかくですから過去のことを書いてみようと思います。こんな風に振り返る機会をいただき、感謝しています。18年の時を超えた期間限定の、F太朗通信です。ぜひご覧になってみてください。

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※記事は2017年3月26日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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