世界のために誰かのために。自分で始められる小さなことを考えよう【第1回SDGsイベントレポート】

最初の印象は、関西弁の気さくな人。阪口竜也さんは、環境破壊や貧困など社会課題の解決と向き合いながら、年間300件以上もの講演依頼で“引っ張りだこ”の事業家だ。「僕のような人が、たくさんの人に協力をしてもらって、仕事ができる。それはSDGsだから」という阪口さん。SDGsは自分には関係ない、どうせなにもできないと思い込んでいる人こそ、ちゃんと知ってほしい。そこで阪口さんに具体的な取り組みなどのお話しを伺った。

更新日:2020/04/10

働く女性におけるSDGsの認知度とは?

n=960 アンケート実施期間:2019年12月~2020年1月 オズモール調べ

65%の女性は「SDGsという言葉すら聞いたことがない」と回答

「SDGsは国連が旗を振って、世界中で大型キャンペーンをしている。今日よりも明日の方が確実にマーケットが広がっているはず」という阪口さん。それなのに、2019年12月~2020年1月に実施したアンケートによると、女性たちの間でSDGsはまだまだ自分ゴトとして捉えている人は決して多くない。

SDGsという言葉自体の認知度は低く、65%は「存在を知らない」と回答。ただ「エシカル」や「サステナブル」をまったく意識していないわけではなく、エコバックの使用などを通して、なにかしらSDGsに繋がることを行動をしている人は少なくない。「SDGsという言葉は聞いたことがあるが内容はよくわからない」「環境とか貧困とか自身でやれることはなさそう」と女性たちは言う。そこでオズモールでは2020年2月中旬に、阪口さんを招いてセミナーを実施した。

阪口竜也さんによるセミナー講演&インタビュー

環境が良くなる仕組み_阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー

勝手に環境が良くなる仕組みを作れないか

「環境を悪くしないようにとか、良くする事業ではなく、勝手に良くなる仕組みを作れないか」と思ったことが、阪口さんの現在の活動における原点だという。今までは、排水で海を汚さないようにできないか、という考え方。でもそれだとなにも変わらない。だったら「排水すればするほどキレイになる、悪くなった環境を良くする排水ができないか」。

そこで阪口さんが作ったのが「米ぬか酵素洗顔クレンジング」。原材料は、米ぬかと小麦のふすまのみ。米ぬかに含まれている微生物が汚れを分解する。「まずは製品が良くないと売れない。添加物も洗浄成分も入っていないけど、きちんと泡立つし、ダブル洗顔もいらない。ウォータープルーフのマスカラもちゃんと落ちるんです」と、ちゃんと女性のニーズも掴んでいる。

そして「この排水が、配管の中の汚れも分解してキレイにするし、最後は川に流れて水をキレイにし、環境改善していく」のだそう。セミナーでは「米ぬか洗顔クレンジング」の試供品が配られ、「これが!?」とみんな驚きながら商品を見つめていた。

価値の逆転_阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー

伐採されない森が化粧品の原料に

環境問題は、世界規模でやらないと解決しないと考えた阪口さんが、次の行動を起こした場所はカンボジアだった。「現在の環境破壊は、アメリカやヨーロッパ、日本などの先進国が経済発展をした代わりに引き起こされた。もしこの先、途上国が同じように発展しようと同じ道を歩んだら・・・地球はもうアウト。そこでやるべきは途上国だと思った」と。カンボジアは、東南アジアでもっとも森林が伐採された国。多くの企業がカンボジアで植林をしたが、それでも森林は減っている。その理由のひとつに、1日1ドルも使えない貧困な人々が、お金のために木を切って売ってしまうため。切るのは一瞬、育つのは何十年。

「じゃあ切られない植林をしよう」と考えた阪口さんは、すでに日本で行っていた化粧品の事業と結びつけることを考えた。「葉か実か種を収穫して、化粧品の原料となりうる植物で森を作ろう。要は、伐採したら損、木を育ててに森を守った方が、毎シーズン収穫したもので原料を作って売った方が儲かると、カンボジアの農村の人たちに思ったら、切らなくなるのでは」、そんな仕組みを作った。雑草も、抜かずに薬草・ハーブとして活用。今、化粧水などの原材料として取り引きをしている。

鹿児島の与論島__阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー
鹿児島・与論島の海

「価値の逆転」を知る

電気や水道、建物もなく、農薬も流通していない、見渡すかぎり人工物ゼロ。一見価値が低いと思われる場所であるけれど、見方を変えると、土地も安く、土も水も空気もキレイ。ではそんなカンボジアの農村で収穫したものと、土地代も高い東京の真ん中で有機栽培したもの、どちらが価値があるといえるだろうか? ふと阪口さんは「価値の逆転」に気付いたという。今までの経済的な価値観ではなく、見方を変えてみると、価値が逆転する。

たとえば人口5000人の鹿児島の与論島。「このキレイな海水で作った化粧水 東京湾で作った化粧水、どちらを買いたいと思いますか?」という問いかけに、私たちも“価値の逆転”を知った。今は与論島に商品開発部を持つという阪口さん。メンバーはリーダー格の80代のおじいちゃんと、若手60代のおじいちゃんたちだと楽しそうに話す阪口さん。現在は、ヘアカラー剤などの原材料となるヘナを育てているという。

成分は米ヌカ・小麦フスマだけ 85g 2343円

米ぬか酵素洗顔クレンジング

2015年パリ協定が採択された国際会議COP21でも取り組みが発表され、世界的に注目を集めることとなった。

_阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー
地元の人たちと集めた椿の種から椿油を

色々な土地での取り組み

与論島ではヘナ以外にもハーブ園も計画中。能登半島にある石川県珠洲(すず)市や東京都の神津島とは、椿の原生林を使った商品も開発。

国連広報センター作成のすごろく「ゴー・ゴールズ」_阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー
国連広報センター作成のすごろく「ゴー・ゴールズ」

SDGsすごろくで楽しみながら学ぶ

すごろくを使って、ゲーム形式でSDGsについて知る機会も。世界での取り組み事例や貧困や教育、環境問題などの現状をクイズを通して学んだ。

参加したユーザーの声

SDGsすごろく_阪口竜也さんオズモールSDGsセミナー
各テーブル3~4名でSDGsすごろくを実施

■セミナー講演について
・活発的に動いている方だからこそ、何か動きだしたいって思えました。(32歳・女性)

・実際にやっていらっしゃる方のお話を伺えて勉強になりました。「大金がなければ」「企業でなければ」という思い込みから自由になれそうです。(40歳・女性)

■すごろくについて
・4人で19個の回答をできたのですが、クイズによって知らなかった事が知れました!1人ではなく、チームでできるのがいいと感じました。(32歳・女性)

・恥ずかしながら予習すらせぬまま参加したので、17項目を、すごろくで遊びながら学ばせていただきました。環境的なものばかりかと思っていましたが、ジェンダーについての項目もあり目から鱗でした。(40歳・女性)

今日からできること

【自分が参加できそうなことを考えてみる!】

「大量生産・大量消費の時代ではない。価値の逆転。そのものにストーリーがあって、それが伝わり、そこに価値を感じてモノが売れる時代。どう作られているか、背景や生産者の顔が見えることが価値がある。たとえば、旅行先で見つけた素材を、土地のおじいちゃんおばあちゃんと話して、仕入れて使い、趣味の延長でクオリティの高いもの作る、それが高く売れる。そんな時代。SDGsは誰でも参加できるんです」と阪口さんは言う。

まずは、自分がなにができそうか、どんなことなら参加できるか、考えることから始めませんか?

今回の講師

フロムファーイースト株式会社 代表取締役 阪口竜也さん

ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。環境や貧困といった社会問題をビジネスで解決することに挑戦している。
【略歴】
2009年 世界50カ国が参加する起業家の表彰制度アントレプレナーオブザイヤーでセミファイナル受賞
2015年 経済産業省 収益指向型 BOP ビジネス推進事業に係る有識者研究会のメンバーとなる
2014年よりカンボジアで持続型の植林、森の叡智プロジェクトを開始
2015年 パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表
2017年 SDGsビジネスアワード大賞受賞
2018年 石川県白山市SDGsアドバイザリーボード委員就任
2019年 サスティナブルコスメアワード受賞

OZmallと一緒にSDGsを知って・考えて・行動してみませんか?

今日から始める小さな一歩 世界とミライとワタシ

今日から始める小さな一歩
世界とミライとわたし

最近よく耳にするようになった“SDGs”という言葉。
「社会課題の解決」と言われても、ピンとこないけれど、自分の小さな選択と行動が、いつか誰かの笑顔につながるかもしれないから。
その小さな一歩で、私と世界がつながって、きっと昨日よりもちょっといい、大切な人のミライを創れるはず。
この特集をきっかけに、一緒に考えて、今日からなにか行動を始めてみませんか。

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WRITING/NAOKO GAKU 

※記事は2020年4月10日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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